東北大、北日本の線状降水帯を左右する「日本海の小低気圧」の挙動を解明
東北大学大学院工学研究科の田原亮太郎大学院生と平賀優介助教らの研究チームは、北日本から北陸地方にかけて甚大な被害をもたらす線状降水帯について、降水量や発生位置の変動を支配する気象メカニズムを突き止めた。日本海上に形成される比較的小規模な低気圧の挙動が、豪雨の規模や雨域の局在化に決定的な役割を果たしているという。研究成果は米国地球物理学連合(AGU)の大気科学専門誌に掲載された。
研究チームは、2011年7月の新潟・福島豪雨および2022年8月に東北から北陸を襲った豪雨の2つの線状降水帯事例に着目した。スーパーコンピューターを用い、初期条件などに微小な差異を加えたアンサンブル計算を実施。それぞれの事例について288通り、計500通りを超える大規模な数値気象シミュレーションを行い、降雨特性のばらつきを詳細に分析した。
その結果、両事例に共通して、日本海上に発生する水平規模1000キロメートル程度以下の「小低気圧(メソ低気圧)」の存在が豪雨の挙動を大きく変化させていることが明らかになった。降雨域の近くに小低気圧が位置したり、その勢力が強く発達したりするシナリオでは、低高度での風の流れや上昇気流、水蒸気の収束がより強まり、もたらされる雨量が顕著に増加する傾向が示された。
さらに、この小低気圧が海側に形成されるか陸側に近づくかによって水蒸気の集まる領域が移動し、降水帯の発生位置も西側・南西側、あるいは東側・北東側へとずれる現象が確認された。線状降水帯の位置がわずか数キロから数十キロ移動するだけでも、特定の河川流域における24時間雨量には極めて大きな差が生じる。
従来の線状降水帯予測では総雨量の見積もりが注視されてきたが、今回の知見は、水害リスクを的確に評価するためには降水帯が「どこに停滞するか」を高精度に予測することが不可欠であることを示唆している。日本海上における小低気圧の発生と発達プロセスの追跡が、地域防災や早期警戒システムの精度向上に寄与すると期待される。
