通俗科学

リュウグウのナトリウムと塩素は粘土鉱物に吸着、強塩基性の水環境が判明 初期天体での生命材料合成を示唆

探査機「はやぶさ2」が回収したC型小惑星「リュウグウ」の試料に含まれるナトリウムと塩素の大半は、食塩(塩化ナトリウム)などの塩鉱物としてではなく、粘土鉱物の表面に吸着した状態で保持されていたことが明らかになった。東京大学などの共同研究チームが放射光分析と熱力学計算を組み合わせて突き止めた。母天体内部に存在した液体の水環境が強塩基性(強アルカリ性)かつ強還元条件であったことを示しており、初期太陽系におけるアミノ酸など生体有機化合物の非生物的合成を後押しする成果となる。

研究成果を発表したのは、東京大学大学院理学系研究科の河合敬宏大学院生(研究当時)や高橋嘉夫教授、金沢大学環日本海域環境研究センターの福士圭介教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の中田亮一主任研究員および渋谷岳造上席研究員らのチーム。研究論文は英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に2026年10月16日付でオンライン掲載された。

研究チームは、大型放射光施設を利用したX線吸収端近傍構造法(XANES)により、リュウグウ試料中に含まれる微量元素および主要元素の化学種(存在状態や価数)を精密に分析した。その結果、塩素とナトリウムの多くは塩鉱物の結晶ではなく、サポナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物(層状ケイ酸塩)の表面に吸着して存在している事実が判明した。

さらに、鉱物表面への吸着反応を組み込んだ詳細な熱力学的化学平衡計算を実施したところ、リュウグウ母天体内部の水質変成は、水素ガスに富む強塩基性・強還元的な液体の水の中で起きていたことが実証された。この環境は、ホルムアルデヒドやシアン化水素などの単純な前駆物質からアミノ酸や核酸塩基といった生体関連分子を合成する反応に極めて有利に働く条件である。

また、試料中に塩鉱物が乏しいことは、母天体から液体の水が失われたメカニズムの解明にも直結する。もし水が単純に蒸発して失われた場合、溶存成分が濃縮されて大量の塩鉱物が沈殿するはずである。塩が析出していないことは、母天体の表層を覆う氷の層の下で水による変成が進行し、その後に氷が昇華して宇宙空間へ去ったことを示唆している。

この昇華による水消失モデルは、C型小惑星が液体の水を失った後も、内部に氷や含水鉱物として大量の水を長期にわたり保持できた過程を説明するものだ。生命誕生前の初期地球へ水や有機物などの生命材料がどのように運ばれたのかをひもとく新たな手がかりとなる。

ひろし

4年以上の経験を持つ、魅力的なフリーランスライター。コンテンツライティングとジャーナリズムに長けています。Net24.Newsのレギュラーコントリビューター。 世界をより良い場所にするようなテーマで書くことが好きです。今は名古屋に住んでいます。

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