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マイホームも印刷して建てる時代となるのか? 3Dプリンターハウスの最前線… -ライブドア

マイホームも印刷して建てる時代となるのか? 3Dプリンターハウスの最前線を覗く


マイホームを持つことは庶民の夢だが、建築業界では数年前から値上げが続いている。
国土交通省が発表した「不動産価格指数(令和4年4月・令和4年第1四半期分)」の「不動産価格指数(住宅)」によれば、戸建てだけでなくマンションの価格も上昇を続けている。

そんな夢のマイホームに一石を投じる新しい技術がある。セメント材料などを活用し建設用に適応させた建設用3Dプリンターで建築する「3Dプリンターハウス」だ。

■3Dプリンターハウスとは?
文字通り3Dプリンターを利用して建築される3Dプリンターハウスは、大型の3Dプリンターで下から順番に印刷する。
基本的に釘やコンクリートによる接合はなく、3Dプリンターのアームが往復しながら建築していく。

技術的には中国が先行しており、一般住宅だけでなく高層ビルも建築することができる。

The GuardianのWorld newsでは、57階建てのビルをわずか19日間で完成させるムービーが取り上げられ、ネット上で話題となった。


57階建てのビルの建設がタイムラプスの動画で視聴できる。出典:The Guardian

〇3Dプリンターハウスのメリット
3Dプリンターハウスには主に3つの大きなメリットがある。

1. 人手不足解消
建築業界では、人手不足が深刻化している。
3Dプリンターハウスであれば、少人数かつ専門家でなくても建築が可能だ。

2. 安価
人件費が大幅に抑えられるため、安価に建築ができる。
これまでの建築方法で数千万円の費用が掛かるところ、3Dプリンターであれば、数百万円での建築も可能なのだ。

3. 工期が短い
セレンディクス株式会社が2022年3月に発表した情報によれば、3Dプリンターハウス「Sphere(スフィア)」はわずか23時間12分で施工を完了した。

いずれも従来の建築の課題をクリアするもので、3Dプリンターハウスの有用性が垣間見られる。

〇3Dプリンターハウスのデメリット
もちろんメリットだけではない。主な3つのデメリットも紹介しよう。

1. 見ためが悪い
3Dプリンターハウスでは、建築素材を1層ずつ積み重ねるため、3Dプリンター独特の積層模様が住宅の表面に出てしまう。

2. 内装に手間がかかる
既存の住宅とは構造が異なるため、3Dプリンターハウスの構造によっては、内装に手間がかかってしまう。とくに素材によっては、あとから電気や水道、ガスを通すための穴を空けるのが難しい。

3. 法整備や基礎工事に対応できない
既存の住宅とは構造が異なるため、法律に未対応のケースもある。
現在の建築基準法では、住宅の強度を上げるため、鉄骨や鉄筋など、指定された建築材料を使用する必要がある。
3Dプリンターハウスはコンクリートで造形できるが、鉄骨や鉄筋を内部に入れられないため、建築基準法を満たせない。

鉄骨や鉄筋を内部に入れられないということは、基礎工事にも対応できない。
地震が多い日本では、この問題をクリアする必要がある。

3Dプリンターハウスでは、従来の建築で問題とならなかったことが、課題となっているのが現状だ。

■日本企業の動き
3Dプリンターハウスは海外が先行しているものの、日本企業も開発に取り組んでいる。
セレンディクス株式会社は2022年3月、愛知県小牧市の百年住宅(小牧工場)に日本初の3Dプリンターハウス「Sphere(スフィア)」を完成させた。

「Sphere」は約10 平米のタイニーハウス(小屋)であり、施工時間はわずか23時間12分、外壁の塗装等の仕上げ工程は、全体の3分の2の時間を要したとのこと。今後、同工程を3Dプリンターで出力できる設計に変更し、さらなる時間短縮を目指す。


愛知県小牧市の百年住宅(小牧工場)に建設した3Dプリンターハウス「Sphere」。

3Dプリンターハウス「Sphere」の事業部責任者 COO 飯田氏は、
「今回、施工が行われた愛知県小牧市にある百年住宅小牧工場は、今から400年前、豊臣秀吉が織田信長の美濃攻めの命を受け、わずか一夜で城を創ったと言われる『墨俣一夜城』まで車でわずか30分の距離です。今回施工にあたった3社をはじめ、世界中から参加いただいているコンソーシアム企業の皆様の協力のもと、令和時代の『一夜城』を実現することができました」と語っている。

他社の事例としては、大林組が2022年5月から技術研究所内で取組んでいる「3Dプリンター実証棟」があげられる。同実験棟は日本で初めて、建築基準法に基づく国土交通大臣認定を取得し、建築基準法をクリアしている。

■3Dプリンターハウスの未来予測
3Dプリンターハウスは、既存の建築にないメリットが多い反面、デザインや法整備、鉄骨や鉄筋を内部に入れられないなどの課題が残されている。

3Dプリンターによる建築は始まったばかりだ。今後、法整備が進み、多くの企業が3Dプリンターハウスに参入してくれば、研究・開発がより加速され、低価格でバラエティーに飛んだ住宅が登場することだろう。

不動産価格指数(令和4年4月・令和4年第1四半期分) – 国土交通省
Chinese construction firm erects 57-storey skyscraper in 19 days
日本初、セレンディクスが3Dプリンター住宅を発表  オープンイノベーションで研究開発、 国内・海外80社以上参加して実現
国内初の国土交通大臣認定を取得した構造形式を用いた3Dプリンターによる建屋の建設に着手
話題沸騰!3Dプリンター住宅の実力と国内外の事例を解説!

ITライフハック 関口哲司





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