通俗科学

京大など、顔料やPFASを使わない「泡構造」の新素材を開発 高白色度と撥水性を両立

京都大学高等研究院物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)のイーサン・シヴァニア教授が率いる国際研究チームは、白色顔料や有機フッ素化合物(PFAS)を一切使わずに、高い白色度と優れた撥水性を兼ね備えた新素材技術を開発した。東京都立大学や中国の東華大学との共同研究による成果で、英科学誌『Nature』に論文が掲載された。

微細な泡が光を散乱させる「構造白」

研究チームが確立した技術は「ディープ・フォーム・フォトリソグラフィ(Deep Foam Photolithography:DFP)」と呼ばれる。光照射によってポリマー内部の分子構造を制御し、溶媒処理を施すことで、内部に光を効率よく散乱させる微細な多孔質泡構造を形成する手法だ。この泡の構造によって光を散乱させ、顔料を含まない「構造白(structural whiteness)」と呼ばれる鮮やかな白を発現させる。

さらに、この発泡処理の過程で素材の表面に微細な凹凸構造が形成される。これがハスの葉の表面のような超撥水性を生み出すため、同一の材料処理によって「内部での高い白色光散乱」と「表面の撥水機能」を同時に付与できる点が大きな特徴となっている。

北斎の浮世絵や自然界の仕組みに着想

この白さの着想源となったのは、葛飾北斎の浮世絵『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』だ。同作品では、波飛沫や富士山の雪、空の雲が白色顔料で描かれているのではなく、印刷されていない和紙本来の繊維構造による光散乱を利用して表現されている。研究チームはこれに加え、自然界の雲や雪、波飛沫、カエルが作る泡巣といった光散乱現象を分析した。また、撥水性についてはハスの葉や花弁の微細な表面構造を模倣している。

酸化チタンやPFASの代替材料として期待

現在、塗料やプラスチック製品などで広く使われている白色顔料の酸化チタン(TiO2)は、健康への懸念から欧州連合(EU)で食品添加物としての使用が禁止されている。また、撥水加工に多用されてきたPFASは、環境中に長く残留することや健康リスクが指摘され、国際的な規制強化が進んでいる。

新技術はフィルムや繊維への適用が可能で、最大で約2万DPIに達する極めて高い解像度での微細パターニングにも対応する。研究チームは、従来の添加剤や有害物質に依存しない、持続可能な食品包装資材や印刷用紙、高機能繊維製品などへの応用を目指している。

ひろし

4年以上の経験を持つ、魅力的なフリーランスライター。コンテンツライティングとジャーナリズムに長けています。Net24.Newsのレギュラーコントリビューター。 世界をより良い場所にするようなテーマで書くことが好きです。今は名古屋に住んでいます。

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