Ia型超新星からの電波を初検出 – 国立天文台
Ia型超新星からの電波を初検出
|研究成果
白色矮星(わいせい)の爆発であるIa型(いち・えーがた)超新星から放射される電波が初めて観測されました。白色矮星が爆発に至るまでの全体像を理解する上で、たいへん重要な知見です。
白色矮星全体が爆発を起こして明るく輝く現象は、Ia型超新星として知られています。このタイプの超新星は、遠い天体までの距離を測る指標として使われ、宇宙の加速膨張を調べる手段となるなど、天文学上たいへん重要な役割を果たしています。
Ia型超新星はこのように重要な役割を担う天体でありながら、その爆発に至るメカニズムは解明されていないのです。単独で存在する白色矮星が爆発することはありません。その爆発のきっかけとして、白色矮星と連星を成すもう一方の星(伴星)の外層部から流れ出した物質が、主星である白色矮星へと降り積もる「降着」が注目されています。降着する物質は、多くの場合は水素が主成分ですが、水素の外層を失った伴星の場合はヘリウムが主成分であることも考えられます。
伴星から流れ出す物質は、すべてが白色矮星に降り積もるのではなく、両方の星を包む「星周物質」を形成すると考えられます。星周物質に包まれた白色矮星が超新星爆発を起こすと、星周物質内で衝撃波が生じて強い電波が放射されることが考えられます。ところがこれまでに、星周物質に包まれたIa型超新星は多数見つかっているものの、その爆発に伴う電波放射が検出されたことはありませんでした。
ストックホルム大学や国立天文台の研究者から成る国際研究チームは、2020年に発見されたIa型超新星を詳細に観測し、この超新星がヘリウムを主成分とする星周物質に包まれていたことを明らかにしました。さらに、この超新星爆発に伴う電波の検出にも成功したのです。検出された電波の強さを理論モデルと比較した結果、爆発前の白色矮星は、毎年太陽質量の0.1パーセントに相当する大量の物質を伴星から受け取っていたことも判明しました。最外層の主成分がヘリウムの伴星からの降着がきっかけとなるIa型超新星爆発が、観測的に捉えられた初めての例になります。
今回、ヘリウムが降着して爆発したIa型超新星からの電波が初めて捉えられたことから、今なお謎が多いIa型超新星の爆発前の様子やその爆発メカニズムについての理解が、今後深まることが期待されます。研究チームは、電波を放つIa型超新星をさらに捜索し、白色矮星が爆発に至る道筋を解明することを目指しています。
この研究成果は、Kool et al. “A radio-detected Type Ia supernova with helium-rich circumstellar material” として、英国の科学雑誌『ネイチャー』に2023年5月17日付で掲載されました。
関連リンク
- 電波で初めて検出されたIa型超新星(科学研究部)
- Radio signal reveals supernova origin (Stockholm University)(英語)
- First Detection of Radio Waves from a Type Ia Supernova (Keck Observatory)(英語)
- First radio signal reveals supernova origin (Trinity College Dublin)(英語)
- Radio signals reveal origin of a supernova (Zwicky Transient Facility (Caltech))(英語)
クレジット:「国立天文台」NAOJ