米・イスラエル、イランを共同攻撃 核・ミサイル網を同時打撃で中東秩序が転換局面に
2月28日、イスラエルとアメリカ軍は、イラン国内の複数の軍事拠点や指揮中枢に対する大規模な共同攻撃を開始した。
作戦はイスラエル側で「ロアリング・ライオン(Roaring Lion)」、米国防総省では「オペレーション・エピック・フューリー(Operation Epic Fury)」と呼称され、テヘラン、イスファハン、コムなど主要都市周辺の軍事施設や防空網、ミサイル関連施設が主な標的となったとされる。
イスラエル空軍は約200機の戦闘機を投入し、西部・中部イランの防空システムやミサイル発射機を中心に約500目標を攻撃したと説明している。
国防相イスラエル・カッツ氏は、今回の行動を「イランによる差し迫った脅威に対する先制攻撃」と位置づけ、「国家の安全を守るために必要な措置だ」と強調した。
米・イスラエル側のねらい
トランプ大統領は動画メッセージで、「イラン政権がもたらす差し迫った脅威を除去し、米国民を防衛することが目的だ」と述べ、核開発と弾道ミサイル能力、そしてハマスやヒズボラなど代理勢力への支援を容認しない姿勢を改めて示した。
ホワイトハウスや欧米当局者は、イランに対し、ウラン濃縮の恒久的な停止、弾道ミサイル計画への厳格な制限、地域代理勢力への支援停止という三つの「核心要求」を提示してきたと説明している。
イスラエルのネタニヤフ首相は、今回の攻撃の目的を「テロ政権がもたらす実存的脅威を取り除くこと」とし、「共同作戦は、勇敢なイラン国民が自らの運命を自らの手で掴む条件を整える」と語った。
イスラエル政府は、これ以上の時間的猶予を与えれば、イランの核計画と長距離ミサイルの大量生産が「耐性の高い段階」に達すると主張し、軍事行動の「リスクよりも放置のリスクが大きい」と訴えている。
国際政治への波紋
イラン最高指導者ハメネイ師が共同攻撃で死亡したとの報道もあり、1989年以来続いてきた同師の統治体制は重大な転換点を迎えたと見られる。
指導部の空白は、国内権力闘争や反政府デモの拡大につながる可能性がある一方、革命防衛隊など強硬勢力が対外強硬路線を強める懸念もある。
中東地域では、イスラエルとイランが再び全面的な軍事衝突の局面に入り、周辺国や湾岸産油国は報復の連鎖と海上交通の安全確保に神経を尖らせている。
欧州諸国は、核問題をめぐる外交解決の見通しが一段と遠のいたと受け止め、緊張緩和と人道上の配慮を求める声を強めている。
ワシントンは、イランの政権交代を事実上促すかたちで「イラン国民に政府を引き継ぐ時だ」と呼びかけており、体制変革をめぐる議論が国連や主要国で激しくなる公算が大きい。
ただし、米軍の長期駐留や治安維持に踏み込めるかどうかは不透明であり、「政権後」の安定設計は現時点で見えにくい。
日本と世界経済への影響
日本にとって最大の懸念は、ホルムズ海峡を通じた原油輸送への影響である。
イランやその周辺勢力が報復としてタンカーや港湾施設、海底パイプラインなどを攻撃した場合、原油供給の途絶や保険料の高騰を通じて、輸入コストと電気料金、物価全体への上昇圧力が強まる可能性が高い。
国際市場では、中東リスクの高まりを受けて原油先物や金価格が上昇し、安全資産とされる米国債や円への資金流入が強まる展開も想定される。
もっとも、米国とイスラエルは「軍事行動は限定的で、民間インフラへの攻撃を避けている」と主張しており、イラン側が海上輸送を本格的に妨害しないかどうかが、今後の相場の分水嶺となる。
日本企業にとっては、イランとのエネルギー・インフラ事業や自動車・機械分野でのビジネス機会が一段と縮小する一方、米・イスラエルとの防衛技術やサイバーセキュリティ分野での協力拡大が課題として浮かび上がる。
サプライチェーンの再構築とエネルギー調達の多角化を進めてきた日本経済だが、地政学ショックの頻度と振れ幅が増す中で、リスク管理の高度化が不可欠になっている。
日本への政策的課題
日本政府は、有志連合への参加要請や自衛隊派遣の是非を含め、米国との同盟関係と中東諸国とのバランス外交をどう両立させるかという難しい判断を迫られる。
また、サイバー攻撃やテロの脅威が高まる可能性もあり、重要インフラ防御や在外邦人保護の観点から、関係国との情報共有と危機管理体制の強化が急務となる。
国内では、エネルギー安全保障と防衛力強化をめぐる議論が一段と現実味を帯び、原発再稼働や再エネ投資、防衛費の水準などをめぐる政策選択があらためて問われる。
米・イスラエルとイランの軍事対立が長期化すればするほど、日本は「距離を置きつつも無関係ではいられない」立場に置かれ、慎重かつ一貫した外交姿勢が求められる。
