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スマホの熱対策は待ったなし! メーカーが取り組み続ける性能向上と発熱問題… -ライブドア

スマホの熱対策は待ったなし! メーカーが取り組み続ける性能向上と発熱問題… -ライブドア


●スマホと発熱の微妙な関係
みなさんはスマートフォンを使っていて「発熱」を気にしたことがあるでしょうか。

ネット閲覧やSNSなど、日常的な利用シーンではほとんど気にすることはありませんが、
最新の3Dゲームアプリや4K動画撮影などを始めた途端に、スマートフォンが素手で持てないほどに熱くなったという経験のある人もいるかも知れません。

スマートフォンと発熱の問題は意外と根が深く、スマートフォン普及期の2015年頃まで遡ることができます。

当時Android OSを搭載したハイエンドスマートフォンには、クアルコム製の「Snapdragon 810」というチップセットが採用されることが多くありました。
このチップセットは発熱が大きく、スマートフォンの排熱処理が間に合わず、

・ゲームを遊んでいると処理性能が落ちる(サーマルスロットリング)
・動画撮影が途中で止まる

このような現象を引き起こしてしまうスマートフォンが出始めたのです。

そのため、クアルコムも対策に追われ、熱対策を施した「Snapdragon 815」というチップセットの市場投入を早めたという事例があります。


2015年発売のソニー製「Xperia Z4」も、Snapdragon 810の発熱に悩まされた機種の1つ

●スマホメーカーの発熱との闘い、その歴史
チップセットを由来とする発熱問題はその後も続いており、ハイエンドスマートフォンは常に熱との闘いだったと言っても過言ではありません。

例えば2020年に発売されたシャープ初の5Gスマートフォンである「AQUOS R5G」では、チップセットのみならず5G通信モジュールやカメラからの発熱も同時に処理するため、
熱対策を抜本的に改善したことを強くアピールしていました。


スマートフォンが高性能化するほどに厳しくなる発熱問題を、メーカーは技術力の向上で改善してきた

また、「ゲーミングスマホ」と呼ばれるジャンルのスマートフォンでは、スマートフォン本体の排熱処理だけではゲーム中のピーク性能を長時間維持することが難しいため、
スマートフォンに専用の空冷ファンを取り付けられる仕様になっているものまであります。


2019年発売のASUS製「ROG Phone II」。背面に空冷ファンを取り付けてスマートフォンを強制冷却する

●Androidスマホユーザー期待の星「Snapdragon 8 Gen 2」
2021年や2022年に発売されたハイエンドスマートフォンも、発熱が大きく問題となった時期でした。

搭載されていたクアルコム製チップセット「Snapdragon 8」シリーズの発熱量が大きく、スマートフォン本体が異常に加熱するという現象を起こす機種が多くあったのです。

対策を施したとされるチップセット「Snapdragon 8 Gen 1」でもあまり改善されず、結局動作クロック数を僅かに落とすなどの対策が必要になった機種もありました。

そして2022年11月に発表されたのが「Snapdragon 8 Gen 2」です。
このチップセットは性能向上とともに電力効率の高さにもフォーカスされていますが、これはほぼ発熱対策と言って良いでしょう。


ついに発表された最新チップセット「Snapdragon 8 Gen 2

一般に、電力効率の悪い電子機器ほど発熱します。
無駄になったエネルギーが熱に変換されるためです。

そこでクアルコムは、

・カメラユニットや通信モジュールとの連携を強化
・製造プロセスや設計を見直し電力効率を向上

このようなアプローチを取っています。

例えばAppleのように、スマートフォン本体とチップセット、そしてOSまで、すべてを自社開発している企業であれば、一貫した設計が可能であるため電力効率の非常に高いスマートフォンを作ることができます。

iPhoneシリーズが比較的少ないバッテリー容量なのに長時間駆動を実現しているのは、こういった理由があるためです。
もちろん、電力効率が高いために発熱も比較的少なくなります。


アップルは、ハードウェアからソフトウェアまで一貫した設計と生産ができることが企業の強みとなっている

Androidスマートフォンのほとんどは、スマートフォン本体もチップセットもOSも、すべて異なるメーカーが作っているためにどうしても電力効率が落ちます。
(唯一、GoogleのPixelシリーズだけはAppleのような一貫生産となっている。)

クアルコムは、この電力効率を落とす無駄を減らそうと、各社との連携を強化したのです。

現在のスマートフォンの発熱問題は、ハイエンドモデルでは顕著にあらわれますが、
ミッドレンジやローエンドのスマートフォンではあまり話題にならないだけに、実際に発熱問題の話題が一般に取り上げられることはとても稀です。

しかしながら、その背景にはスマートフォンの進化において避けて通れない性能向上や機能、使い勝手の向上に関わるだけに、
性能向上と発熱問題という課題に取り組むメーカーの弛まぬ企業努力や技術革新があるということも、知っておくと良いかもしれません。

執筆 秋吉 健





提供(C)ライブドアニュース

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