スマホ業界に激震 ライカとの協業でシャオミが、アップルやサムスンに追いつく? -ライブドア
1849年創業という歴史のあるカメラメーカー、ライカがスマートフォン世界シェア3位のシャオミと提携する。
この連携により、ライカのカメラ技術を搭載したスマートフォンが今年7月にも発売されるという。
この2社の協業はスマートフォン市場、カメラ市場にどのような影響を与えるのだろうか?
ライカとシャオミが協業を発表
ライカがスマートフォンメーカーと協業したのは今回が初めてではない。
2016年4月にファーウェイから発売された「P9」にライカ監修のカメラが搭載され、以降ファーウェイはアップルやサムスンを抜いてスマートフォンカメラNo.1の座を勝ち取った。
ファーウェイにとっては弱点だったカメラ性能を大幅に引き上げることができただけではなく、ライカというブランドを冠した製品を出すことで、グローバルでの信頼性を一気に高めることに成功した。
それまでは「中国の勢いのある1メーカー」にすぎなかったファーウェイが、「あのライカが認める(提携する)品質の高いメーカー」と世界に認知されたからだ。
ライカのおひざ元、ドイツでもP9の発売以降はファーウェイのスマートフォンを名指で購入する消費者が増えた。もちろんファーウェイのスマートフォン品質そのものも高く、グローバル市場で十分通用するレベルに達していたことも要因のひとつだ。
とはいえ、いくら品質が良い製品でも、市場での知名度や信頼性が無ければヨーロッパの消費者は決して手を出さない。
ライカとの協業でカメラ性能と信頼度を高めたファーウェイのスマートフォンは、既存の大手メーカーのスマートフォンからの乗り換え顧客の獲得に成功を収めたのだ。
ライカとコラボした「P9」でファーウェイのスマホは世界中に認知されていった
ライカは、さらに2020年にはシャープとの協業も始めている。
ただしシャープのスマートフォンは日本市場向けのものであり、ライカ自らの名前で投入した「Leitz Phone」もベースモデルはシャープ、そして日本のみで販売される。
ライカとシャープの協業は日本のスマートフォン市場に大きな影響を与えるだろうが、今回はより大きなグローバル視点での動きを探るため、日本での話は割愛する。
さてライカとファーウェイの協業はうまくいっていたが、2019年にアメリカ商務省がファーウェイへの制裁を科したことで、ファーウェイのスマートフォンビジネスは一気に失速する。
ファーウェイのスマートフォン品質や開発力が落ちたわけではなく、制裁によりファーウェイと取引のある企業がビジネス関係を打ち切ったからだ。
そのためファーウェイは新製品を思うように開発することができなくなってしまった。
せっかくスマートフォン市場に食い込み、カメラに代わる新しいフォトグラフィーの世界の中心に自らを置くことができたライカも、提携先のメーカーが新製品を出せない状況になれば進化が止まってしまう。
そのためライカも、次の提携先を探していたことだろう。
またファーウェイの成功を横目で見ていたスマートフォンメーカーも、ライカとのコラボのタイミングをうかがっていたはずだ。
そんな中で発表されたシャオミとライカの協業は、両者にとってベストなタイミングといえる。
スマートフォン展開が好調のシャオミだが、その屋台骨を支えているのはコストパフォーマンスにたけた低価格モデル「Redmi」シリーズだ。
しかし高価格なハイエンドモデル分野ではアップルやサムスンと太刀打ちできるレベルには達していない。
シャオミの誇る高性能カメラフォン「Mi 11 Ultimate」だが販売数ではアップルに負ける
カウンターポイントによるプレミアムスマートフォン(400ドル以上)のマーケットシェアは、
アップルが60%で1位、
サムスンが17%で2位、
そのあとは大きく差が付きファーウェイの6%、シャオミ5%と続く。
シャオミは業界に先駆けて1億800万画素カメラ搭載スマートフォンの投入や、折りたたみモデルなど先進技術の採用にも積極的に取り組んでいる。
シャオミは日本で発売した「Redmi Note 11 Pro 5G」に1億800万画素カメラを搭載するなど、ミドルレンジモデルのカメラ性能の向上にも力を入れている。
しかしそれでもシャオミの高性能・ハイスペックな製品はiPhoneの1/10も売れていないのが現状だ。
シャオミがいくらカメラを強化しても、多くの消費者は、
「カメラと言えばアップル、サムスン」
こうした認識が定着しているのだ。
シャオミがプレミアムモデルを売るためには、ブランドの認知だけではなくカメラ性能の良さと信頼性を知らしめなくてはならない。
ライカとの協業はシャオミのスマートフォンに「箔をつける」ものになるだろう。
もちろんシャオミのスマートフォンのカメラ性能はすでに十分に他社に勝てるだけの性能を実現している。
カメラ性能を評価するDXOmarkによると、シャオミの「Mi 11 Ultra」の総合スコアは143点で3位。上位はHonorとファーウェイであり、iPhone 13 Proの137点をすでに上回っているのだ。
一方ライカはファーウェイとの蜜月が長すぎた。
ファーウェイがこのような状況になってしまうと、ライカのカメラのノウハウをスマートフォンに生かすことができないばかりか、せっかく開いた新しい市場への道が閉ざされてしまう。
同じ歴史あるカメラメーカーのハッセルブラッドはOPPO、OnePlusという新興勢力と提携、カールツァイスはソニーやvivoと協業をしている。
カメラ市場の重鎮ともいえる企業がスマートフォンメーカーと協業を進める中で、世界3位のシャオミとの提携は再びライカの名前を世界中に響かせることができるだろう。
「ライカの乗ったシャオミのスマートフォン」は、発売されれば世界中から大きな注目を集めることは間違いない。
発売予定の7月は新型iPhoneが登場する9月より2か月も前だが、高いカメラ性能を求める消費者がシャオミの新製品に一気に飛びつくかもしれない。
ライカとの協業によりシャオミはファーウェイのように世界シェア2位に上り詰め、数年内にサムスンを脅かす存在になるかもしれない。
執筆 山根康宏
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