iPhone SE(第3世代)は、いつまで「お買い得」なのか? トレンドの変化と新たなライバルの登場 -ライブドア
●iPhone SE(第3世代)はまだまだ「お買い得」?
Appleが3月に発売した新型スマートフォン「iPhone SE(第3世代)」は、
・初めてスマートフォンを持つ中高生
・仮想移動体通信事業者(MVNO)のユーザー
このようなユーザー層を中心に、発売から3ヶ月が経った現在でも高い人気を維持しています。
Appleの公式オンラインストアでの価格は、最も安いモデルでも57,800円です。
さらに安価な2〜3万円からラインナップされているAndroidスマートフォンと比較すると単純な価格だけで言えば若干高く、ミッドレンジ価格帯のスマートフォンということになります。
iPhone SE(第3世代)は現在でも「お買い得」なスマートフォンなのでしょうか。
基本性能や機能の面から評価し、ライバルとなるAndroidスマートフォンなども考察します。
iPhone SE(第3世代)は買い?様子見?
●処理性能のみに特化した仕様は賛否両論
iPhone SE(第3世代)の最大の特徴でもあり、本体性能としてはこれが唯一のメリットだと言い切っても良いのが基本性能(処理性能)の高さです。
本機に搭載されたチップセット(SoC)はApple製「Apple A15 Bionic」ですが、このSoCはiPhoneシリーズの最新の標準モデルである「iPhone 13」とまったく同じものです。
最上位機種の「iPhone 13 Pro」と比較してもほとんど変わらない性能で、3DゲームやVRアプリなど、高い処理性能を必要とするコンテンツでも非常に快適に利用できます。
この点においては、同価格帯の多くのAndroidスマートフォンよりもメリットが大きいと言えます。
ハイエンドの性能をミッドレンジに
しかしながら、iPhone SE(第3世代)のメリットはここに集約されているのみだとも言えます。
例えば画面サイズは4.7インチで、画面のアスペクト比も16:9です。
画面サイズが6インチを超え、さらに20:9などの超縦長ディスプレイが主流となった昨今のスマートフォンモデルと比較すると、どうしても見劣りします。
また、ホームボタンとその指紋認証についても賛否が分かれるところです。
ホームボタンは直感的で使いやすい反面、画面サイズに大きな制約が生まれ大画面化を難しくしています。
iPhone 12以降のFace ID対応機種の場合、iOS 15.4 からはマスクをしていても顔認証が可能になったことで、ホームボタンおよび指紋認証の価値は相対的に低下しています。
ホームボタンこそがiPhoneの象徴!……という時代ももはや過去のものだ
カメラ性能でもトレンドから大きく逸脱しつつあります。
iPhone SE(第3世代)のカメラは1200万画素の広角(標準)カメラ1基のみです。
Androidスマートフォンではミッドレンジやローエンドにおいても3〜4基のカメラユニットを搭載しているモデルが多く、超広角や望遠など、用途に応じた使い分けが可能になっています。
比較的安価で高性能なミッドレンジスマートフォンというカテゴリーで考えた場合、「SNSにキレイな写真を載せたい」というニーズが多いことは十分に想像できます。
iPhone SE(第3世代)のカメラ性能が悪いわけではありませんが、撮影する環境や状況に合わせてさまざまに使い分けられる多眼カメラを持つスマートフォンには勝てません。
前世代のiPhone SEからカメラ機能の強化くらいは欲しかった
●iPhone SE(第3世代)を脅かす夏の新スマホとは?
それでは、iPhone SE(第3世代)のライバルとなるスマートフォンは一体何でしょうか。
候補はいくつかありますが、今後その筆頭になると考えられるのは、7月28日に発売が予定されているGoogleの「Pixel 6a」です。
Pixel 6aもiPhone SE(第3世代)同様に中価格帯のスマートフォンで、上位機種と同じSoC「Google Tensor」を採用しており、基本性能の高さを武器としています。
Google Tensorの性能はApple 15 Bionicより若干劣りますが、最新の3DゲームやVR・ARコンテンツなどを楽しむには十分な性能です。
また、カメラ機能では1220万画素の広角(標準)カメラに加え、1200万画素の超広角カメラも搭載しています。
標準カメラでは撮りづらい屋内での集合写真なども撮りやすく、ユースケースを想定した実装に好感が持てます。
画面サイズでもアスペクト比20:9の6.1インチディスプレイを採用しており、
全画面デザインである点も他のハイエンドスマートフォンと比較して見劣りしません。
まだ発売まで1ヶ月少々ありますが、Googleの公式オンラインストアでは53,900円からとなっており、価格的にもiPhone SE(第3世代)のユーザー層をターゲットとしていることは明白です。
今後通信キャリア各社からも発売が予定されており、消費者は、
・実績と安定感のあるiPhoneシリーズであるiPhone SE(第3世代)にするか
・トレンドとユーザーニーズをしっかりと掴んだPixel 6aにするか
この2つで大きく迷うことになるかも知れません。
今年の夏はミッドレンジスマートフォン市場で激しいシェア争いが見られそうだ
●「とりあえずiPhone」の時代が終わろうとしている
本体デザインや基本設計を変えないことで価格を抑え、長らくミッドレンジ価格帯の王者として君臨してきたiPhone SEシリーズは、
一般的な用途においては十分すぎるほど高い基本性能により、「なんでもできる」ことが最大のメリットです。
一方で、画面サイズやカメラの仕様など、第3世代になりスマートフォンのトレンドからその基本設計が乖離し始めているのが大きな不安材料です。
これまでであれば、同価格帯のスマートフォンよりも基本性能で大きな差があったためにメリットを強くアピールすることができましたが、
Pixel 6aが登場する夏以降は、その優位性も縮まります。
しかしながら、iPhone SE(第3世代)には「iPhoneシリーズである」という何にも代えがたいメリットがあるという点も見逃せません。
シンプルな使いやすさと多くの人が使用している点から「操作などで分からないときは家族や友人に聞けばいい」という安心感があります。
iPhone SE(第3世代)は間違いなく「お買い得」なスマートフォンですが、
これまでのように「とりあえずiPhoneを買っておけば安心」という時代は終わろうとしています。
安易に飛びつく前に、自分がスマートフォンで何をしたいのか、何ができるスマートフォンなのかをしっかりと見極めて購入しましょう。
執筆 秋吉 健
提供(C)ライブドアニュース