通俗科学

研究成果 2026年4月8日 木星と土星の衛星系の違いを決めるのは磁場

ガス惑星の周りの円盤で、衛星が形成される様子のイメージ。木星(左手前)には磁場に沿ってガスが流れ込んでいる。土星(右奥)には、赤道面からガスが流れ込んでいる。この時期の土星には環(わ)はまだ存在しないが、木星と区別しやすくするために、この図では環を描いている。左奥は生まれたばかりの太陽。(クレジット:藤井悠里(L-INSIGHT/京都大学)、木下真一郎)

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木星と土星、どちらともガスでできた惑星ですが、その衛星系の様子は異なります。惑星誕生時の磁場の違いによって、この2つの惑星の衛星系が異なる運命をたどったのかもしれません。コンピュータシミュレーションによって新たなシナリオが描かれました。

太陽系には木星と土星の2つのガス惑星が存在しています。木星には100個以上もの衛星がありますが、中でもイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4天体は格段に質量が大きく、木星のすぐ近くを回っているという特徴を持っています。一方、土星には280個以上の衛星が見つかっていますが、それら全ての質量の95パーセントを巨大衛星タイタン一つが占めており、そのタイタンは土星から離れたところを回っています。このような衛星系の特徴の違いはどうして生まれたのでしょうか。

その謎を解く鍵は、衛星系の誕生の仕方にあります。ガス惑星の周囲を回る巨大衛星は、惑星が誕生するときに惑星の周りにできるガス円盤の中で形成されたと考えられています。衛星の特徴はこのガス円盤の構造や組成によって変わりますが、円盤の構造は惑星の密度や温度、質量といった惑星の特徴によって決まります。惑星の磁場もガス円盤の構造を決める重要な要素の一つにもかかわらず、これまで十分に考慮された研究はされていませんでした。

京都大学の藤井悠里(ふじい・ゆり)助教らの研究チームは、惑星が誕生したばかりの頃の惑星磁場に着目をしました。木星と土星が誕生時にはどのような磁場を持っていたのか、それぞれの惑星の内部構造をコンピュータシミュレーションによって調べました。その結果、惑星内部では数倍程度しか差がない磁場強度が、表面では木星のほうが100倍程度強くなることが分かりました。

この磁場の違いは、惑星の周りのガス円盤の構造と衛星の形成にどのように影響するのでしょうか。研究チームは、国立天文台が運用する「計算サーバ」を用いたシミュレーションによって、ガス円盤の構造の詳細な解析と衛星の進化の様子を調べました。すると、磁場の強い木星では、惑星磁場に沿ってガスが惑星に流れ込む「磁気圏降着」が起こり、惑星の近くではガスの無い空隙ができることが分かりました。ガス円盤の中で形成された衛星は木星に徐々に近づいていきますが、空隙の手前で衛星がせき止められ、円盤の内縁付近で安定した軌道を持つようになりました。一方、磁場の弱い土星では磁気圏降着は起こらず、土星の近くで形成された衛星は徐々に土星に落ちていってしまい、土星から離れたところで成長した衛星だけが生き残ることが分かったのです。木星と土星の磁場の違いが、巨大衛星系の違いを生み出していたことが分かりました。

本研究では、ガス惑星の内部構造やガス円盤に働く基本的な物理メカニズムを、整合的に取り入れたシミュレーションを初めて実現させ、木星と土星の巨大衛星の違いを説明することに成功しました。衛星系の多様性の理解をさらに深め、今後発見が期待される太陽系外惑星の衛星の探査へも重要な示唆を与える成果です。

詳細記事

天文シミュレーションプロジェクト



クレジット:「国立天文台」NAOJ

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