通俗科学

有人与圧ローバの実現に向けた変形型月面ロボットによる月面データ取得の実施決定について- Net24 News

 

 

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)は、研究を進める月面でのモビリティ「有人与圧ローバ」の実現に向けて、JAXA、および株式会社タカラトミー(以下「タカラトミー」)、ソニーグループ株式会社(以下「ソニー」)、同志社大学の4者の共同開発による変形型月面ロボットを用いて、株式会社ispace(以下「ispace」)が実施予定の月着陸ミッションを活用した月面でのデータ取得を行うことを決定しました。

 

 有人与圧ローバが走行する月面は、地球と比べて重力が6分の1であり、またレゴリス(月の表面を覆う砂)に覆われた路面等、地上とは異なる特殊な環境です。2019年度から開始した有人与圧ローバのシステム概念検討の結果、自動運転技術および走行技術の詳細検討に向けて、月面において画像データ等を取得する必要があると判断しました。

 月面でのデータ取得は、変形型月面ロボット(図1)1機をispaceの月着陸船(図2)により月面に輸送し(2022年打上げ予定)、月面を走行させてレゴリスの挙動や月面での画像データ等を月着陸船経由で地上に送信します。取得したデータを用いて、有人与圧ローバの自己位置推定アルゴリズムの評価や走行性能へのレゴリスの影響評価等に反映する予定です。なお、JAXAは、変形型月面ロボットの月面輸送・データ取得に関する競争入札の結果、ispaceを選定し、本年4月に契約を締結しました。

 変形型月面ロボットは、JAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募(RFP)の枠組みの下、2016年よりJAXAおよびタカラトミーが筐体の共同研究を開始し、その後、2019年にソニーが、2021年に同志社大学が加わり、4者で共同開発を進めているものです。タカラトミーおよび同志社大学の有する筐体の小型化技術、ソニーの有する制御技術、そしてJAXAの有する宇宙環境下での開発技術・知見を活かした、過酷な月面環境で稼働可能な超小型・超軽量の自走型ロボットです。月面到着後に走行用の形状に変形することにより、月着陸船搭載時の容積を小さくできる特徴があり、今後の月面探査ミッションで活躍することが期待されています。

 JAXAは、民間企業が有する月着陸機会や技術を活用して、引き続き、国際宇宙探査の実現に向けて着実に検討を進めてまいります。

 

有人与圧ローバの実現に向けた変形型月面ロボットによる月面データ取得の実施決定について- Net24 News
図1 変形型月面ロボット(左:変形前、右:変形後)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※変形型月面ロボットの仕様(予定)

サイズ:直径約80mm(変形前)

重量 :約250g

 

図2 月着陸船
図2 月着陸船

 

※関連リンク

有人与圧ローバ:https://www.jaxa.jp/press/2019/03/20190312a_j.html

https://www.jaxa.jp/press/2019/07/20190716a_j.html

宇宙探査イノベーションハブ:
https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/

 

※関係者のコメント

 

(JAXA理事/有人宇宙技術部門長 佐々木宏)

 日本は、2019年に、米国が提案するアルテミス計画への参画方針を決定しました。JAXAでは、この方針に基づき、日本の技術を結集して、国際宇宙探査に関わる月・火星を対象としたミッション開発やシステム検討を進めています。その中でも、有人与圧ローバは持続的な探査活動に向け、重要な役割を担う月面の移動システムです。宇宙探査イノベーションハブの成果である変形型月面ロボットや民間企業の月着陸ミッションを活用して、貴重な月面でのデータを取得し、有人与圧ローバの検討を着実に進めていきたいと考えております。

 

(タカラトミー 富山幹太郎 会長)

 「科学技術の進んだ国にこそおもちゃは栄える」これは創業者である私の祖父の言葉です。高度な科学技術をもっと身近に感じるための創意工夫、おもちゃ屋ならではの発想や技術力は、これまで多くの子どもたちに驚きや感動を与えてきました。おもちゃ屋である私たちは、誰よりも子どもたちを夢中にさせるノウハウを持っているのだと私は思います。

 創業以来、守り続けてきたおもちゃ作りの原点である、安心・安全な品質と細部にまでこだわる職人魂、柔軟な発想力、そしてなによりも子どもたちを笑顔にしたいという強い想いが今回の宇宙探査に活かされることで、子どもたちがこれまで以上に自然科学領域に興味を持ち、宇宙の面白さを知ってもらうきっかけとなってくれることを心から願っています。

 

(ソニーグループ 玉井久視 執行役員 R&Dセンター システム技術開発・基盤技術研究開発担当)

 ソニーは、従来より小型で省電力なIoT向けスマートセンシングプロセッサ搭載ボード「SPRESENSETM」を使った制御システムの開発を進めてまいりましたが、この度変形型月面ロボットに適用することで月面探査ミッションの実現に貢献できることを光栄に思います。

 ニュースペースという言葉が定着し、民生品の宇宙利用も模索される現在、培ってきた技術や新たな技術の探索を通して、継続的にこの分野に貢献して行きたいと思っております。ソニーはJAXA、タカラトミー、同志社大学と引き続き連携を図り、今後の月面探査ミッションを強力にサポートしてまいります。

 

(同志社大学 田中和人 生命医科学部長)

 本学の渡辺教授が有する筐体の小型化技術が月面探査ミッションに貢献できることをうれしく思っています。このような挑戦的な研究に,柔軟な発想を有する学生が取り組むことで新たな成果が得られることを期待します。

(同 渡辺公貴 研究代表者)

 前職の株式会社タカラトミー在籍中にJAXA宇宙探査イノベーションハブの超⼩型変形月面ロボットの共同研究に携り、現在も月面探査ミッションに向けて共同研究をしております。若い⼈たちの科学技術への興味に繋がれば幸いです。

 

—————————————

(c) 宇宙航空研究開発機構(またはJAXA)- 掲載URL

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です