生活と健康社会

2025年、高齢者の体力は過去最高水準に 厚労省調査で判明、ジムも「100歳時代」対応が加速

厚生労働省が12月3日に公表した最新の「体力・運動能力調査」(2024年度実施)で、65歳以上の高齢者の体力指標が過去30年で最も高い水準にあることがわかった。特に70代前半の握力や持久力、柔軟性が1990年代と比べて明確に向上しており、「高齢者=弱い」というイメージが完全に過去のものになりつつある。

調査では、65~79歳の男女約1万2000人を対象に握力、長座体前屈、開眼片足立ち、10メートル障害物歩行などの項目を測定。結果、70~74歳男性の平均握力は2024年で38.2kg(1998年は35.1kg)、女性は24.8kg(同22.3kg)と、いずれも過去最高値を更新した。持久力の指標となる6分間歩行距離も、70代前半で約550メートル(1998年は約480メートル)と大幅に伸びている。

研究チームは主な要因として以下の3点を挙げる。

  1. ウォーキングや軽い筋トレが日常に定着した
  2. 自治体の「いきいき健康教室」や民間ジムのシニア向けプログラムが充実した
  3. 健康診断や人間ドックの受診率が上がり、早期発見・早期対処が進んだ

実際に街のジムを取材すると、変化は一目瞭然だ。東京・練馬区のスポーツクラブ「ルネサンス光が丘店」では、平日の午前10時台のスタジオが60代後半~80代でほぼ埋まる。人気は「シニアエアロ」「アクアウォーキング」「チェアエクササイズ」など、膝や腰に負担をかけないメニュー。インストラクターの山田さんは「10年前は70代で来る人は珍しかったけど、今は80歳超えでも『まだまだ現役』と言って通ってくれます」と話す。

同じく大阪・梅田の「ティップネス」では、今年4月に「100歳ライフ・プログラム」を本格スタート。内容は週2回の筋トレ+有酸素運動+バランス練習で、参加者の9割が「階段の上り下りが楽になった」「転倒が減った」と実感しているという。料金は月額8800円(税込)と一般会員より2000円ほど安く、医師監修の負荷設定で安心感も高い。

自治体レベルでも動きは早い。横浜市は2025年度から、全区の地域ケアプラザで「80歳からの筋トレ教室」を無料化。参加条件は「自分で会場まで歩いて来られること」だけ。初回は定員の3倍の申し込みが殺到し、抽選になった区もある。

厚労省の担当者は「平均寿命が伸びる中で、健康寿命とのギャップを埋めるには70代までの体力向上がカギ。今回の結果は、日本が高齢社会のモデルケースになりつつある証拠」と胸を張る。

ジムで会った78歳の田中さん(東京都杉並区)は、こう笑った。
「昔は『年だから仕方ない』って諦めてたけど、今は仲間と一緒に汗かいて、孫と一緒に走れるのが嬉しい。100歳まで現役でいるつもりですよ」

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