山梨県峡東地域及び滋賀県琵琶湖地域の2地域が、新たに世界農業遺産に認定されました
農林水産省は平成31年2月、山梨県峡東地域、滋賀県琵琶湖地域、兵庫県兵庫美方地域の3地域に対し、世界農業遺産への認定申請に係る承認を行い、その後、国連食糧農業機関(FAO)において審査が行われてまいりました。
このうち、山梨県峡東地域及び滋賀県琵琶湖地域が、今般、FAOにより新たに世界農業遺産に認定されました。これにより、日本国内の世界農業遺産は計13地域となりました。
なお、兵庫美方地域については、引き続きFAOにおいて審査が行われているところです。
地域の概要
山梨県峡東地域
扇状地の傾斜地において、土壌や地形、気象等に応じて、ブドウやモモなどの多様な果樹の適地適作が古くから行われるとともに、我が国独自のブドウの棚式栽培が開発され、現在まで継承されています。
「盆地に適応した山梨の複合的果樹システム」
扇状地の傾斜地において、土壌や地形、気象等に応じた、ブドウやモモなどの果樹の適地適作が古くから行われ、独自のブドウの棚式栽培が開発され、現在まで継承されている。
峡東地域は、日本のブドウ栽培発祥の地とされ、ブドウ「甲州」は、平安時代にはすでに栽培されていたとも言われている。また、モモ、スモモ、カキなども古くから栽培され、江戸時代にはすでに果樹の産地として知られていた。
扇状地の傾斜地において、それぞれの土地に適応するために、多様な果樹を栽培するとともに、独自の技術が考案された。中でも約400年前に考案されたブドウの甲州式棚と疎植・大木仕立てを組み合わせた栽培は、降水量の多い日本の気候に適応するために開発された技術で、現在日本各地に普及している。
また、果樹園に自生する植物を利用した草生栽培は、土壌の流亡防止や有機物の補給だけでなく、多様な生物の生息に大きく貢献している。
果樹農業は、枯露柿やワイン醸造などの果実加工、約120年前に始まったとされる観光果実園などとともに発展し、多様な文化・祭事とともに世界に誇る特色ある地域を形成している。
滋賀県琵琶湖地域
「森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」
水田営農との深い関わりの中で発展してきた伝統的な内水面漁業がその中核となっています。湖魚を介して漁業と農業がつながる資源循環型システムで、エリ漁やナレズシ等の独特の食文化が1000年以上にわたって受け継がれています。
水田営農との深い関わりの中で発展してきた伝統的な琵琶湖漁業がその中心。“里湖(さとうみ)”とも呼ばれる循環型システムで、千年の歴史を有するエリ漁や独特の食文化が継承されている。
多くの在来魚が生息する琵琶湖の湖辺では、弥生時代以降、人が開発した水田にニゴロブナ等の湖魚が遡上し、そこを繁殖場として利用するようになりました。そして、人は農作業の傍ら、こうした湖漁を捕獲する待ち受け型の漁法を発展させてきました。
漁法の代表格はエリ漁です。鎌倉時代には、漁獲の競合に対処するためエリの設置を制限するなどの社会的な仕組みも築かれ、現在の資源保全や漁業調整の礎となっています。
漁獲された湖魚は、「ふなずし」等の「なれずし」にも加工され、重要な保存食となるほか、客人をもてなす御馳走や祭礼でのお供えとしても用いられてきました。
こうした食文化は、漁業や農業を受け継ぐ精神文化的な基盤の醸成に寄与してきました。また、多様な主体が参画して琵琶湖の水質や生態系を保全する、現代の「環境こだわり農業」や水源林保全にもつながってきています。