理研、サブサイクル光の高エネルギー増幅に成功 アト秒を超えるゼプト秒パルス実現へ道
理化学研究所(理研)光量子工学研究センター未踏レーザー科学研究チームの西宮海人基礎科学特別研究員、ラジプート・ランバブ特別研究員、高橋栄治チームディレクターらの研究チームは、光の電場が1回振動し終える周期以下の極めて短い時間幅を持つ「サブサイクル光パルス」の出力を大幅に増幅する新技術を開発した。研究成果は米科学雑誌『Science Advances』オンライン版に2026年10月21日付で掲載された。
レーザー光のパルス幅を極限まで短縮すると、電場の振動周期と同等あるいはそれより短い極限的な状態に至る。こうしたサブサイクル光は、物質中の超高速な電子ダイナミクスを観測・制御するための強力な光源として期待されているが、これまでは十分な高エネルギー出力を得ることが極めて困難だった。
研究チームは、独自の「波形合成シード発生法」と、高橋チームディレクターらが確立した「異種非線形結晶・二重チャープ光パラメトリック増幅(HNC-DCOPA)法」を統合した。これにより、1.4オクターブという極めて広い波長帯域を維持したまま、中赤外領域のサブサイクル光を50ミリジュール超(100ミリジュール級)にまで増幅することに成功した。これは従来のサブサイクルレーザーにおける出力報告値と比較して100倍以上の高出力に相当する。
生成された光パルスの時間幅は6.7フェムト秒(1フェムト秒は1000兆分の1秒)を記録した。中心波長約2.27マイクロメートルにおける電場振動周期の7.54フェムト秒を下回っており、電場振動0.88回分に相当するサブサイクル条件を満たしている。
さらに、この高出力サブサイクルレーザーを高次高調波発生実験に適用したところ、得られたスペクトルから最短で35アト秒(1アト秒は100京分の1秒)となるフーリエ限界パルス幅の生成に適した特性が確認された。併せて実施された数値シミュレーションでは、今回の増幅手法を拡張することで、電場振動がわずか0.5回となる「ハーフサイクル光」の高出力増幅も理論上可能であることが示されている。
2023年のノーベル物理学賞の対象となったアト秒パルス技術は、電子の運動を捉える新たな物理計測を切り拓いた。今回の技術開発は、従来の限界を打破し、1桁アト秒パルスや、その1000分の1の極限領域であるゼプト秒(10垓分の1秒)パルスの実現に向けた基盤として期待が寄せられる。
なお、本研究は文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「次世代アト秒レーザー光源と先端計測技術の開発」などの支援を受けて実施された。
