理研と慶応大、自己免疫疾患の「原因変異」を高精度に見極める新技術「UNIChro-seq」を開発
理化学研究所生命医科学研究センターの石垣和慶チームディレクター(慶應義塾大学医学部教授兼任)や山本一彦チームディレクター、慶應義塾大学医学部の河野通大助教、波多野裕明助教らによる共同研究グループは、自己免疫疾患の発症につながる遺伝的変異の働きを高精度に同定する新技術「UNIChro-seq(ユニクロシーク)」を開発した。研究成果は英科学誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載された。
関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患では、全ゲノム関連解析(GWAS)などにより多くの発症リスク関連領域が見出されてきた。しかし、特定の領域内に多数存在するDNA配列の違い(一塩基多型など)の中から、実際に遺伝子の働きを変えている真の「原因変異」を正確に突き止めることは技術的な課題となっていた。
研究グループが開発したUNIChro-seqは、標的とするゲノム領域のクロマチンの開き具合(アクセシビリティ)を高い精度と効率で定量化する解析手法である。この技術では、着目した標的ゲノム領域由来のDNAを選択的に増幅した上で、固有分子識別子(UMI)を付与して個々のDNA分子数をデジタル計数する。これにより、父親由来・母親由来といったアレル(対立遺伝子)ごとの影響を高感度に測定できるようになった。
さらに、CRISPRゲノム編集技術とUNIChro-seqを組み合わせることで、疾患発症リスクと関連する変異の機能を網羅的かつ精密に検証できる解析系を構築した。ゲノム編集を用いた機能解析では偽陽性の発生が懸念されるが、研究グループは双方向ゲノム編集の手法を導入することでこの問題を克服した。
実証研究として、T細胞の分化や制御に関与するLEF1遺伝子座の近傍に位置するリスク変異(rs58107865)を解析したところ、この変異がクロマチン構造の変化を介して関節リウマチの発症に関与する分子機構の一端が明らかになった。
今回開発されたUNIChro-seqと双方向ゲノム編集の組み合わせは、自己免疫疾患だけでなく多様な多因子疾患における病態解明や、創薬ターゲットとなる機能的変異の絞り込みへの応用が期待されている。
