社会

ミラーレスデジカメを手にしたら「絞り」を使わないともったいない -ライブドア



今は写真も動画もスマートフォンのカメラで十分という人が多い。
ビルボード広告も、映画も、スマートフォンのカメラで撮影できてしまうほどだ。

このように最近のスマートフォンカメラの高性能化は驚くばかりだ。
はっきり言って「スゴすぎる」レベルといってもよいだろう。

それでも写真を撮っていると「ミラーレスデジカメ」が欲しくなる。
これは、なぜだろうか?

ミラーレスデジカメを持っているとカッコイイからなのか?
ミラーレスデジカメは所有欲を満たしてくれるからなのか?
写真を「ちょっとデキる」気分にしてくれるからなのか?

ミラーレスデジカメが欲しくなる明快な理由は十人十色だが、
物欲に負けてミラーレスデジカメを買ったなら、
「カッコイイ」
これだけではもったいない。

いくらスマートフォンカメラで十分といっても、
せっかくのミラーレスデジカメだ。
ミラーレスデジカメを持ったのなら、スマートフォンにはできない、
「美しい写真」を撮ってみよう。

●スマホカメラにはない「絞り」という強力ツール
最近のスマートフォンカメラは、超広角〜望遠レンズ、4K動画……など、高性能な機能がてんこ盛りだ。

しかし、1つだけ「カメラなのにない」ものがある。
それが「絞り」だ。

「絞り」とは、レンズを通る光の量を変える機能のこと。
ミラーレスデジカメや一眼レフデジカメで利用するレンズは、レンズ本体内に複数の羽根が組み込まれている。この羽根の開く大きさで光の量をコントロールしているのだ。
たとえて言うなら、人間の瞳孔が明るさによって開いたり閉じたりするのを機械的に再現している機能といえる。

絞りは写真撮影にとって強力なツールの1つだ。
本格的な写真撮影においてならないものだ。
ただスマートフォンは、本体が薄くて小さいため機械的な羽根を組み込むことは不可能。そのため「美しく撮れる高性能カメラ」を搭載していても、絞りについては、デジタル処理で再現するなどするしかないのが現状だ。

実はGalaxy S9+など、ハイスペックモデルの中には絞りを搭載したモデルもごくわずかだが存在する。ただそれでも2段階(Galaxy S9+の場合はF1.5とF2.4)程度。
絞りで光を調節でき範囲は小さく、効果も限られている。


シャッター速度と感度(ISO)を調整できるカメラアプリも存在するが、絞りを調整する機能はない。(Adobe Lightroom)

●「ちょうどいい明るさ」の基本
「きれい」な写真が撮れるのは、最適な光の量を取り込んでいるからといえる。
光の量が多ければ画面は白く飛んでしまう(明るすぎて真っ白になる)し、少なければ真っ暗(暗すぎて真っ黒になる)に写る。実際に写真撮影すると、そんな失敗をした経験は誰しもあるだろう。

ではどうすれば最適な光の量を得られるのか。それは、
・絞り
・シャッター速度
・感度
この3つの要素をそれぞれ増減させて、最適な光量に直接することでできる。

「絞り」は、前出のように、レンズを通る光の量を調整する機能。
「シャッター速度」は、その名のとおりシャッターを切るスピード(写真を撮る時間)を調整する機能だ。
さらに「感度」はセンサーに当たる光を取り込む機能だ。感度が低ければ真夏の日差しのような強い光でも撮影でき、逆に感度が高ければ夜間など光が少ないシーンでもわずかな光で写真が撮れる。

デジタルカメラは、これらの要素の調整を電子的に処理して最適な光量の写真を撮影しているのだ。

また同じシーン(光量)でも、この3つの組み合わせを変えることで効果の異なるさまざまな写真撮影ができる。
次の4つのパターンは「ほぼ同じ光量」のシーンで3要素を調整して撮影する方法だ。


つまり、
絞りを小さくした(絞った)分だけ光量が減るのでシャッター速度は遅くする(1)か、
感度を高くして光を取り込む(2)か、
絞りを開くと光量が増えるのでシャッター速度を速くする(2)か、
感度を低くして光量を抑える(4)か。
といった組み合わせだ。

●美しい写真には「ボケ効果」がある
ここまでであれば、「絞り」がなくても、シャッター速度と感度だけの調整でも撮影できるから問題ない、そう思うだろう。

その思考がまさに、スマートフォンカメラの限界なのである。

「絞り」は光量の調整に加えて、大きな効果を生む。それが「ボケ効果」だ。
技術的な理論は割愛するが、一般的に絞りを絞るとボケ効果が少なくなり、絞りを開くとボケ効果が大きくなる。

この「ボケ」を使いこなすことこそミラーレスで撮影する真髄だ。

その効果は実際に、絞った写真と絞りを開いた写真を比べれば一目瞭然だ。


「絞りを開く」 FUJIFILM X-Pro3 カールツァイス Touit 32mm/F1.8 (F1.8)
※F1.8……絞りの値。値が小さいほど開いた状態を意味する


「絞りを絞る」FUJIFILM X-Pro3 カールツァイス Touit 32mm/F1.8 (F22)

絞りを開いた写真は背景がボケるため、中心部が引き立つ。
一方で絞りを閉じた写真では前景から背景までピントが合っている。
絞りを開いた写真は、茶色い土の色をぼかして花に視点を集中させることができる。
全体にピントが合っている絞った写真では、せっかくの花の白も周囲の土の茶色や雑草によりかすんでしまう。

もちろん常にボケ効果を使えばいいというものではない。
人物ポートレートや接写などで被写体の一部を引き立てさせたいのであればボケ効果を生かし、広い風景で全体を美しくとらえたいのであれば絞って全体にピントを合わせる。
ミラーレスであればそういった使い分けによって自分なりの「絵づくり」が思いのままになる。

これがスマートフォンカメラにできない楽しみ方なのだ。

最後に、最近のスマートフォンには「ポートレートモード」があると思う方もいるだろう。
そこでスマートフォンのポートレートモードでも撮ってみた。


iPhone 12のカメラで通常どおり撮影。奥のほうがわずかにボケているが広い範囲でピントが合う。


iPhone 12のポートレートモードで撮影。被写体の背後だけが急激にボケている上に、ボケの度合も平坦な印象がある。

ポートレートモードでも確かに周囲はボケているが、これは2つのレンズを使い、デジタル処理で作ったボケ効果なのである。
絞りを使った周囲に向って段階的にボケていく自然なボケ効果とは異なり、中心の被写体以外が一気にボケてしまうのだ。
この違いは、写真を分かっている人が見ればすぐに違いが分かる。「絞り」によって生み出された美しいボケ効果には到底及ばない。
またボケる量を微妙に調節するといった自分なりの絵づくりも難しい。

また、ポートレートモードでは仕組み上、複数のレンズを使うためズームができない、一定の距離以上は近づけないなど、被写体によってはボケ効果がうまく出せないケースもある。

ミラーレスデジカメを使いこなした「絵づくり」には無数の楽しみ方がある。
また別の機会にいろいろなテクニックを紹介できればと思う。

執筆 八木 重和





提供(C)ライブドアニュース

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です