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格安スマホ/SIMのMVNOは大丈夫なのか? 携帯大手の値下げ競争で生き残れるのか -ライブドア


格安スマホ/SIMのMVNOは大丈夫なのか? 携帯大手の値下げ競争で生き残れるのか

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NTTドコモの「ahamo」など、携帯電話大手が提供開始したオンライン専用の安価な料金プランは好評を得ています。
一方、厳しい立場に追い込まれたのが、その大手から回線を借りてモバイル通信サービスを提供する「MVNO」(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる企業です。

MVNOの現状と課題を追ってみましょう。

MVNOも携帯大手に対抗! 非常に安いプランを投入へ
MVNOは低価格でスマートフォンが利用できるサービスを提供し、「格安SIM / 格安スマホ」などの名称で注目を集めたことで知られています。
代表的な所ではインターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmio」やオプテージの「mineo」、NTTコミュニケーションズの「OCNモバイルONE」などが挙げられるでしょう。

MVNOが低価格でサービスを提供できたのは、
・基地局整備をする必要がない
・携帯電話大手から回線を借りるだけ
こうした投資コストが安いこと。
さらに、
・実店舗を持たない
・オンラインでの契約やサポートを主体にする
こうした顧客サポートにかかるコストを大幅に抑えているためです。

しかし今回、携帯大手が、オンラオイン契約やサポートを主体とするahamoなどの新サービスを提供したことで、安さを武器に成長してきたMVNOは大きな打撃を受けることになりました。

MVNOは、従来の料金プランの水準では、携帯大手のオンライン専用プランには対抗できないことから、早速、MVNO各社も新料金プランを打ち出し、対抗する姿勢を見せています。

実際、mineoは2021年2月より新料金プラン「マイピタ」を提供開始しており、音声通話付きで20GBプランでは2178円と従来プランの半額以下のとなっており、ahamoなどより一層安い料金を実現させています。
またIIJmioも4月より開始した「ギガプラン」では、音声通話付きで20GBプランが2068円とさらに安く、2GBの小容量プランに至っては月額858円と、1000円を切る料金で利用できるようになっています。


mineoが2021年2月より提供している新料金プラン「マイピタ」

これでスマートフォンの通信料金は、さらに下がっていく。

しかしちょっとまってください。
MVNOは、携帯大手からネットワークを借りてサービスを提供する立場です。
ネットワークを借りる際に支払う料金が下がらなければ、利用料金を大幅に下げることはできないハズです。

にもかかわらず、
従来から大幅に料金を引き下げた新料金プランを提供できた。

これは、なぜでしょうか?

総務省の措置でネットワークを借りる料金が大幅減
そこに大きく影響しているのが総務省です。
総務省は、携帯電話市場の競争を促進するためMVNOの振興に力を入れています。
2020年10月に打ち出した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」でも、
・MVNOがデータ通信のネットワークを借りる際に支払う「データ接続料」を3年間で5割減らす
・音声通話のネットワークを借りる際に支払う「音声卸料金」を低廉化する
このようなことを打ち出しています。


総務省「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の概要

この後、携帯各社がオンライン専用プランを打ち出したことで、アクション・プランの予定のまま進めていてはMVNOが携帯大手に対抗できない状況が生まれてしまいました。

そこでMVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会は、総務省に緊急の改善を求める要望書を提出、可及的速やかな料金引き下げを求めたのです。

結果、携帯大手がアクション・プランよりも前倒しでデータ接続料を半減させるなど、大幅な引き下げが実現されました。
また音声通話に関しても、音声卸料金の引き下げによる基本料の引き下げに加え、新たに携帯大手の側が「プレフィックス番号自動付与」という機能を提供するに至っています。


総務省「接続料の算定等に関する研究会」第43回会合資料より。データ接続料の半減は1年前倒しで実現している

MVNOは、携帯大手のような通話定額サービスを提供できません。
このことから、安価なネットワークを経由する「中継電話サービス」を活用して通話料を引き下げています。
ですがこれらを利用するには、
電話番号の前に独自のプレフィックス番号を付けて電話をかける必要があります。
それが面倒な場合は、専用のアプリを使って電話をしなければ料金は安くなりません。

つまりひと手間、余分にかかっていたのです。

そこで携帯大手の側は、電話をかける際にプレフィックス番号を自動付与する仕組みを提供することで、専用アプリなどを利用しなくても、MVNOの中継電話を利用できるようになるという訳です。

実際OCNモバイルONEが4月から提供を開始した新料金プランではこの仕組みを用い、スマートフォン標準の電話アプリから電話をかけるだけで、30秒11円で音声通話ができる「OCNでんわ」が使えるようになっています。


総務省「接続料の算定等に関する研究会」第28回会合のNTTドコモ提出資料より。
プレフィックス番号自動付与はMVNOの安価な通話サービスを利用しやすくする仕組みだ

このような総務省の施策により、MVNOは、なんとか携帯大手に対抗するサービスを打ち出せているように見えます。

ですが、このような具体的な対抗策を実施できているのは、まだMVNOでも大手に限られているのが実情です。

MVNOの数は大小合わせて既に1000を超えています。
その多くがこの激しい価格競争に追随、対応していけるのか?

中小のMVNOまで追随・対応していけるとは考えにくいと思われます。
それだけに、今後、価格競争から脱落するMVNOが多数出てくる可能性は、決して小さくないといえそうです。

執筆 佐野 正弘



提供(C)ライブドアニュース

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