AI依存で批判的思考力が急速に低下、エネルギー消費と誤情報も危機的水準に
マイクロソフトリサーチとカーネギーメロン大学による画期的な研究では、AIの能力に対する信頼が高まるほど、自らの「批判的思考」への取り組みが減少することが明らかになりました。936件のAI支援タスクを分析した結果、「認知的オフローディング」という現象が顕著に観測されました。これは、本来自分で考えるべき作業をAIに任せてしまい、独立した分析が行われなくなる状況を指します。
心理学者による複数研究の分析によると、この現象は特に哲学専攻の学生で顕著で、AIへの依存から68.9%が「知的な怠惰」へと陥り、本来必要な認知的訓練を失っています。若年層(17-25歳)ではAI利用率が高いうえ、批判的思考スコアが特に低くなっています。
AI導入加速でエネルギー消費が急増
AIの導入が進む中、その「環境負荷」も急拡大しています。ゴールドマンサックスによれば、AIによるデータセンターの電力需要は2023年~2027年で50%、2030年までには165%の増加が見込まれています。国際エネルギー機関(IEA)は、2030年に米国のAIデータ処理が鉄鋼・セメント・化学製造業の合計以上の電力を消費すると試算しています。
米国内のデータセンターは現在、全電力の約4.4%を消費しており、2028年までに3倍へ拡大見通しです。OpenAIのGPT-3など1モデルの学習だけで1,287メガワット時が必要で、これは一般的な米国家庭120軒分の年間電力量に相当します。
AIによる誤情報生成が危機的水準に
AIが「虚偽情報」を作り出す割合の増加も、深刻な問題となっています。2025年8月のマウントサイナイ研究所の調査では、セーフガードのないAIモデルでは50%~83%もの高い「ハルシネーション(虚偽生成)」率が報告されました。最も悪かったDeepSeek製モデルは82%超、OpenAIのGPT-4oですらデフォルト設定で53%の割合でした。
OpenAIの最新モデルo3やo4-miniでは、人について要約させた場合33%・48%の虚偽生成率を記録しており、これまでより悪化しています。NewsGuardの調査によれば、1,271を超えるAI自動生成ニュースサイトが偽の政治情報や捏造事件の記事を大量配信しています。
研究者は「AIが本質的に“知的な驚き”を経験できない」点を重大な限界としています。これは、複雑な推論作業をAIに委ねることで、根本的な理解や批判的な疑いが生まれなくなる本質的問題につながっています。