通俗科学

東京都立大、大気圏再突入時の宇宙機を守る電磁力エアロブレーキングの実験システムを開発

東京都立大学大学院システムデザイン研究科の嶋村耕平准教授らによる研究チームは、宇宙機が大気圏へ再突入する際に機体を高熱から保護しながら減速させる「電磁流体力学(MHD)エアロブレーキング」の地上検証に向けた新たな実験システムを開発した。研究成果は、アメリカ航空宇宙学会(AIAA)が発行する学術誌『Journal of Spacecraft and Rockets』に掲載された。

宇宙機が秒速数キロメートル以上の超高速で惑星の大気圏に突入する際、機体前方に生じる強い衝撃波によって周囲の気体が電離し、超高温のプラズマが形成される。この環境下で機体内部から磁場を印加すると、電離した気体との間にローレンツ力が発生し、衝撃波層を機体表面から押し離す効果が生じる。これにより、機体への熱流束の低減と空力抵抗(MHD抵抗)の増大による減速効果を両立できる技術として、MHDエアロブレーキングが期待されている。

研究チームは、地上試験装置である極超音速膨張波管(expansion tube)を用い、小型模型に対して数十マイクロ秒間にわたり秒速7キロメートルを超える衝撃波を照射する試験環境を整備した。短時間で通過する衝撃波に合わせて強力な磁場を立ち上げるため、パルス形成回路(PFN)から小型模型内部の電磁石コイルへ大電流パルスを同期させて投入するシステムを構築した。

実験では、鈍頭円筒型の「モデル1」と、小惑星探査機「はやぶさ」などのカプセル形状を模したMUSES-C型の「モデル2」という2種類の小型模型が用いられた。PFNからの電力供給により、モデル1では1.24テスラ、モデル2では1.58テスラの平均ピーク磁束密度の発生に成功した。1.58テスラという磁場強度は、比較用に用いられた球状ネオジム永久磁石の約2.1倍に達する。

高速度カメラによる発光現象の観測では、磁場を印加した場合、磁場がない状態と比較して高温の衝撃波層(自己発光層)の厚みが15パーセント以上増大することが確認された。この結果は、超高温プラズマが機体表面から遠ざけられ、熱負荷の低減とブレーキ力の向上が実際に生じる現象を実験的に裏付けるものとなった。

ひろし

4年以上の経験を持つ、魅力的なフリーランスライター。コンテンツライティングとジャーナリズムに長けています。Net24.Newsのレギュラーコントリビューター。 世界をより良い場所にするようなテーマで書くことが好きです。今は名古屋に住んでいます。

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