欧州委員会、AI独立性強化に向けた戦略を発表
欧州委員会は、人工知能(AI)の導入を促進するために、主要産業分野でのAI依存度を欧米や中国から削減し、欧州の技術主権を確立するための包括的な10億ユーロ(約110億円)の戦略を発表しました。
ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「AIの未来を欧州で創造したい」と述べ、ロボティクス、医療、エネルギー、自動車などの重要産業での「AIファースト」アプローチを推進すると強調しました。
この「Apply AI戦略」では、医療、製薬、エネルギー、モビリティ、製造、建設、農食品、防衛、通信、文化の10の戦略分野に焦点を当て、欧州ニーズに特化したAIモデルや先端のスクリーニングセンターを設立することが計画されています。資金は、Horizon Europeやデジタルヨーロッパプログラムなど既存のEUプログラムから拠出され、加盟国や民間企業からの追加投資も期待されています。
技術主権担当のヘンナ・ヴァーキュネン欧州委員は、「企業は可能な限りEU製のソリューションを選択すべきだ」と述べ、現在のAIスタックへの外部依存が「国家や非国家主体によって武器化されるリスクがある」と警告しています。
現在、欧州の企業のAI利用率は13%にとどまり、2030年までに75%の導入を目標とする委員会の目標には大きなギャップがあります。このイニシアチブは、欧州の技術依存を減らし、AI採用を加速することを目指しています。
さらに、科学研究向けには、「AI in Science Strategy」としてRAISE(Resource for AI Science in Europe)が設立され、欧州の既存インフラを結ぶ仮想AI研究機関として機能します。Horizon Europeから6億ユーロの資金が割り当てられ、研究者への計算リソース提供やAI人材育成に向けた制度が強化されます。初のRAISEイベントは2025年11月3-4日にコペンハーゲンで開催予定です。
これらの施策の調整のため、業界、学術界、市民社会を結集する「Apply AIアライアンス」が設立され、AIの動向を監視するAIオブザーバトリーも創設されます。
この発表は、2025年4月の「AI大陸行動計画」を受けてのもので、欧州のAI投資が加速する中、フランス発スタートアップのMistral AIが14億ドルの評価額で20億ドルの資金調達を成功させたことが象徴的な動きとなっています。また、世界初の包括的AI規制の実施促進のため、AI法サービスデスクも設置されています。