大気の揺らぎを極限まで補正した太陽系外惑星の直接撮影 – 国立天文台
大気の揺らぎを極限まで補正した太陽系外惑星の直接撮影
|研究成果
すばる望遠鏡に搭載した地球大気の揺らぎを高度に補正する装置を用いた観測で、新たな太陽系外惑星(以下、系外惑星)の直接撮影に成功しました。衛星による精密な位置観測データを用いて効率的に系外惑星を探す新しい手法と連携した、最初の発見です。
これまでに5000個を超える系外惑星が発見されています。しかし、ほとんどは間接的な観測による発見で、系外惑星からの光を写真のように直接画像として捉えたものは20例ほどしかありません。これまで行われてきた直接撮影による系外惑星探査は、観測対象を絞り込むことが難しく、多数の天体をやみくもに観測して探す方法だったためです。
欧州宇宙機関(ESA)が2013年12月に打ち上げた位置天文観測器「ガイア(Gaia)」は、恒星の天球上の位置をこれまでにない精度で測定しました。この観測データを利用し恒星の位置のふらつきを加味することで、効率的に系外惑星を探す手法が開発されました。これまでにもこの手法を用いて、系外惑星よりやや重い褐色矮星(わいせい)などの存在を推定し、直接撮影に成功しています。
今回、自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター、国立天文台の研究者から成る国際研究チームは、この手法に基づき、すばる望遠鏡に搭載した超補償光学装置SCExAO(スケックスエーオー)を用いた観測から、新たな系外惑星「HIP 99770 b」の直接撮影による発見に成功しました。主星である「HIP 99770」は、はくちょう座の方向130光年の距離にあり、見かけの明るさが4等級と肉眼でも見える恒星です。今回発見した系外惑星は、この恒星から太陽-地球間の17倍離れた距離を周回しています。また、この系外惑星の質量は木星の質量の15倍(誤差の範囲は±1)であると推定しました。直接撮影で発見した系外惑星としては、これまでより格段に精密な推定値です。
今回のような観測方法で発見される系外惑星は、今後の地上の超巨大望遠鏡による高コントラスト観測の性能を実証する上で最適です。また将来、第二の地球を撮影するための技術としても有望です。今後の同様の観測方法の発展と、多くの系外惑星の発見が期待されます。
この研究成果は、Currie et al. “Direct Imaging and Astrometric Detection of a Gas Giant Planet Orbiting an Accelerating Star”として、米国の科学雑誌『サイエンス』に2023年4月13日付で掲載されました。
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クレジット:「国立天文台」NAOJ