「微生物燃料電池」を用いた排水処理の実現に向け、 微生物発電セルのスケールアップに成功- Net24ニュース
栗田工業株式会社(本社:東京都中野区、社長:門田 道也)は、排水中の有機物を電気エネルギーに変換することのできる微生物発電セルを開発し、「微生物燃料電池」としての実用化に向けたスケールアップに成功しました。電力消費、CO2排出削減に貢献できる本電池を組み込んだ排水処理装置の実用化に向け、実排水での適用評価を開始します。
工場の排水は周辺環境に影響を与えない水質に処理し、下水道や河川・海域に放流されています。しかし、排水処理において広く用いられている活性汚泥法※1は曝気のための電力消費や大量に発生する余剰汚泥(廃棄物)の処理・処分に伴うCO2排出量が大きく、その削減が課題となっています。こうした中、注目されるのが次世代の創エネルギー技術である微生物燃料電池です。本電池は、発電菌と呼ばれる微生物の働きにより、排水中の有機物を分解処理すると同時に、従来汚泥となっていた有機物を電気に変換することができます。そのため、創出した電気を用いて排水処理することが可能となり、CO2排出量を削減することができます。本電池は、世界中の研究機関・企業で研究開発が進められていますが、排水処理効率や発電効率、性能の長期安定維持、実規模サイズへのスケールアップなどに課題があり、実用化には至っていない状況でした。
これらの課題に対し、当社は多岐にわたる水処理分野の知見を基に開発を進め、本電池の構成に好適な材質の選定とそれらを組み合わせた装置形状や構造の最適化を図り、日清紡ホールディングス株式会社と共同で実用化に向けた微生物発電セルの実規模サイズへのスケールアップに成功しました。実規模サイズでは他に例のないCOD Cr除去速度 20kg/m3/d、発電量 200 W/m3という世界最高レベルの性能を達成し、数年以内でのCO2排出量実質ゼロの排水処理の実現を目指します。
また、「微生物燃料電池」を中心とした排水処理の装置構造、運転方法等に関して、当社ではこれまでに10件以上の特許を出願しており、実排水への適用評価を開始することで更なる性能改善を進めていきます。
クリタグループは、中期経営計画「MVP-22(Maximize Value Proposition 2022)」において、CSRを経営の中核に据え、社会との共通価値の創造に注力しています。今後当社は、微生物燃料電池を組み込んだ排水処理装置を実用化し、排水処理のカーボンニュートラル※2を達成することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
※1:活性汚泥法とは、好気性微生物を利用して酸素のある条件下で有機物を分解する排水の処理方法
※2:カーボンニュートラルとは、二酸化炭素排出量を抑制するための概念。排出量を全体としてゼロにする考え方
本装置について、適用等にご興味がある方は、下記よりお問い合わせください。
■微生物燃料電池を用いた排水処理装置
https://kcr-pg.kurita-water.com/MicrobialFuelCell_Inquiry.html
出典:@Press