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機械学習で読み解く化石星からのメッセージ―宇宙で最初に生まれた星は孤独ではなかった― – 国立天文台

機械学習で読み解く化石星からのメッセージ―宇宙で最初に生まれた星は孤独ではなかった―

研究成果

今回の研究の模式図
今回の研究の模式図。「初代星」が単独で誕生するのか、それとも集団で誕生するのかによって、その次の世代として誕生する「古い星」の元素組成に違いが生じると予想される。研究チームは機械学習によって、この違いから生じる特徴を見つけ出した。(クレジット:Kavli IPMU)

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天の川銀河に存在する古い星の元素組成を、機械学習の手法を用いて解析した結果、宇宙で最初に生まれた「初代星」が連星系や星団として誕生したことが示されました。すばる望遠鏡に新たに搭載される分光器で得る観測データに、この機械学習の手法を用いることで、初代星についての新たな知見が得られると期待されます。

宇宙で最初に誕生した星を「初代星」と呼びます。ビッグバンの時点で存在した水素やヘリウムは、初代星の誕生によって初めて、炭素や酸素などの重い元素に合成されました。そしてこのような重い元素は、星の最期に起こる超新星爆発によって星間空間にばらまかれました。

初代星を探る唯一の観測的な手掛かりは、天の川銀河に生き残る「古い星」です。古い星は、とりわけ重い元素が少ないことから、初代星が合成した重い元素が取り込まれたガスを材料として誕生したと考えられます。これらの元素組成から、初代星の質量やその星による超新星爆発について知る手掛かりを得ることができます。すばる望遠鏡の高分散分光器HDSは、こういった星の元素組成を詳細に調べることができる世界有数の観測装置であり、これまでも多くの古い星を観測してきました。

東京大学、国立天文台、英国のハートフォードシャー大学の研究者から成る国際研究チームは、古い星の元素組成から初代星の性質を解明するために、機械学習を用いた新しい手法を開発しました。特に注目したのは、初代星が単独で生まれるのか、あるいは連星系や星団として複数の星が同時に生まれるのか、という問題です。研究チームは、HDSによる観測データを含む、450個もの古い星についての元素組成を集約し、その結果およそ68パーセントの星が複数の初代星から重い元素が供給されたと解釈できることを示しました。これは、初代星が同時に複数生まれた可能性に対して定量的な制限を与える、初めての結果です。

今回開発された解析手法を用いると、大容量の観測データの解析が可能になります。現在開発が進められている最先端の分光器「超広視野多天体分光器PFS」は、今後すばる望遠鏡に搭載され、2024年から大規模な探査観測を開始します。これまで観測できなかった、天の川銀河の外側やアンドロメダ銀河のような遠方にある星々の運動や元素組成が、PFSによって観測が可能になります。今後はPFSの観測データにこの解析手法を用いることで、未知の初代星と宇宙の始まりについての新たな知見が得られることが期待されます。

この研究成果は、Hartwig et al. “Machine Learning Detects Multiplicity of the First Stars in Stellar Archaeology Data”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2023年3月22日付で掲載されました。

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クレジット:「国立天文台」NAOJ

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