中東紛争、世界で再生可能エネルギー転換を加速
米国とイスラエルによるイランへの攻撃が2月末に始まって以来、原油価格は4年ぶりに1バレル=100ドルを突破した。イランのドローン攻撃により施設が被害を受けたカタールは、世界LNG貿易の約2割を担う輸出契約について「不可抗力」を宣言。サウジアラビア国営石油会社も主要製油所の操業を一時停止し、イラクは日量約150万バレルの減産に踏み切った。ホルムズ海峡の海上輸送はほぼ停滞している。
影響は即座に世界へ波及した。フィリピンは燃料節約のため週4日勤務制を導入し、インドネシアは代替原油の確保に奔走。中東からの石油供給に95%を依存する日本では、そのうち約3分の2が途絶する可能性が浮上している。これを受けて、国際エネルギー機関(IEA)の加盟国は合計4億バレルの戦略備蓄放出を決定。これはロシアのウクライナ侵攻後に実施された放出量の2倍を超える規模だ。
再エネは「戦略的必然」に
ブリュッセルで開催された「グリーン成長サミット2026」で、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のサイモン・スティール事務局長は、今回の危機を「化石燃料依存の脆弱さを示す事例」と位置づけた。
「太陽光は海峡封鎖に左右されず、風力発電に海軍の護衛艦隊は必要ない。化石燃料依存こそが国家の安全と主権を脅かしている」とスティール氏は欧州各国閣僚に訴えた。
スティール氏によると、2025年には再生可能エネルギーが初めて石炭を抜き、世界最大の発電源となった。昨年のクリーンエネルギー投資額は2兆ドルを超え、化石燃料部門への投資をほぼ倍に上回った。ロイター通信によれば、今回のエネルギーショックを契機に各国が石油・ガス依存からの脱却を急いでいるという。
なお立ちはだかる課題
勢いは強まっているが、移行には多くの障壁も残る。世界最大の太陽光パネル・風力タービン生産国である中国は、現在の再エネ供給網において不可欠な存在だ。そのため「新たなエネルギー依存が生まれるのでは」との懸念が浮上している。価格高騰の影響を最も受ける新興国の多くは、短期間で再エネ設備を整える資金力を持たない。さらに欧州やアジアの発電で重要な役割を担う天然ガスの代替も、即時には難しい。
それでも専門家は「歴史は繰り返す」と指摘する。1970年代のオイルショックは原子力開発を促し、ロシアのウクライナ侵攻後には欧州が風力・太陽光発電の拡大を急速に進めた。そして現在、中東産原油からの脱却を半世紀にわたり果たせなかったことが、「痛みを伴う教訓になっている」と日本のエネルギー専門家は語っている。
