【The NFT Records】 音楽NFTの著作権処理及びデータフォーマットの課題解決に向け、 パブリックチェーンでの音楽NFT流通を実現するための構想と新規格を提言、実現へ – Net24
クレイオ社は、この波を通じ、音楽に携わる人たちがテクノロジーの恩恵を正しく受け、また、音楽のファンがよりアーティストとの関わりを深めることのできる、新しいビジネスモデルを構築したいと考えています。
以下のグラフは、国際的な音楽業界団体のIFPIが発表した2021年の音楽業界全体の収益を表したものです。2000年代に入り一貫して下落傾向が続いていましたが、2015年に持ち直し、2021年にはついに1990年代並となりました。
一見、このグラフは音楽産業自体が拡大期に入ったように見えますが、同時にこれは、音楽を支えるマネタイズの難しさも表しています。
拡大を続けるストリーミングはスマートフォンやタブレットの普及、その手軽さから急速に収益を伸ばしてきました。例えばSpotifyは、2021年に52600組が1万ドル以上を生み出し、また1000組を超えるアーティストが、Spotifyだけで100万ドルを生み出したとレポートしています。しかし、これに見られるように、ストリーミングでは一部の楽曲に再生数が集中していることが見られます。また、収益分には原盤権に対する支払も含まれているため、実際にアーティスト本人が手にする額はより少なくなります。
もちろん、ライブやグッズ販売等で補完をし、アーティストとして生計を立てている方も数多く存在しているでしょう。そして日本ではまだCDの販売の割合が大きく、CDが音楽産業にとっての生命線となっている現状もあります。
そこで私たちはNFTを通じて、既存の音楽産業がその権利構造を変えることなく、デジタル上で音楽をパッケージ販売できる仕組みを開発しました。
NFT、Non Fungible Tokenは非代替性トークンであり、デジタルコンテンツの情報や所有者のアドレスをブロックチェーン上に記録することでデジタルコンテンツの唯一性を保つ技術です。2021年にはアートを中心に市場規模が約100倍になるなど、大きな注目を集めています。
そんな中、NFTと音楽に関しても、2021年の当初より数多くのアーティストがその可能性を感じ、様々なトライアルを続けています。NFT音楽専門マーケットプレイスもグローバルレベルで多くのプロジェクトが生まれ、各社しのぎを削っています。
しかし、NFTと音楽には、大きな3つの課題が存在します。
1.コンテンツのデータがオープン(購入者以外も視聴可能)であること
一般的なマーケットプレイスでは、音楽コンテンツをNFTとして販売しようとすると、音楽ファイルそのものを表示する形になります。つまり、マーケット上で音楽自体を聞けてしまうことになります。そこで各プラットフォームは、音楽そのものを売るのではなく、アートワークとセットとして販売するなど、あくまでユーザーに「所有感」を提供するというところに留まるケースが多くなっています。
2.1つの音楽ファイルに対し、1つのNFTとして発行する形になること
NFTで音楽を販売するとなると、現状では、1つのファイルに1つのNFTデータというフォーマットにならざるをえず、既存の音楽流通とは異なる形になります。例えば、CDはジャケット写真や歌詞カードがセットで封入されます。アルバム販売の場合はさらに複数の楽曲がセットになります。いずれもプラスオンのコンテンツが提供されますが、従来のNFT販売ではこれに対応することが出来ません。
3.権利処理が適切にされていないこと
音楽は、NFTマーケットにアップロードされた時点で「公衆送信」されたことになります。この楽曲がJASRAC等の機関に信託されていた場合は、プラットフォーム運営者が著作権使用料を適切に支払わなければなりません。しかしこの権利処理を適切に行っている事業者ばかりではないでしょう。これらロイヤリティの還元スキームについて、NFTマーケットではまだ確立がされていない処も多く、旧譜や既存の流通に乗る楽曲をNFTとして販売することを困難にしています。
以上3つの課題をふまえ、私たちは、アーティストだけでなく、音楽産業にとって最良の方法かつ、アーティストのファンにとっても価値のある音楽作品の届け方を、音楽業界関係者、ブロックチェーン技術のエキスパートも含めて議論をしてきました。
私たちは、NFTが音楽産業を支配するという考えは持っていません。おそらく今後もストリーミングやYouTube、そしてテレビやラジオといったメディアの役割が消えることは無く、重要な役割を果たしていくでしょう。
一方で、CDに代表される音楽パッケージのメディア(媒体)は、既に家にCDプレイヤーが無いという家庭も多くなっているように、その役目を果たし終え、一部のニッチな商品となっていくことが予想されます。
だからこそ、私たちは、これまでCDが担ってきた音楽産業全体の売上をNFTがカバーし、ストリーミングやライブといった活動に加え、NFTの販売というものがスタンダードなプロモーションとなる時代のため、音楽産業の構造そのものを変えず、メディアを変更するという仕組みを構築しました。
私たちは音楽NFTを「パッケージ」と定義しています。それは従来のレコードやCDが担ってきた、音楽をお客様に直接届ける媒体としての役割です。
YouTube動画の大きなジャンルに「開封動画」があります。それほど、人々にとってパックを開封するというのは刺激的であり、人を引き付ける要素にもなります。誰しも、プレゼントを貰ってその箱を開ける瞬間の喜びは理解できるでしょう。私たちはそんな喜びを提供してくれるNFT音楽を作ることができるのではないか、と考えています。
また、適切なNFT音楽の流通構造を構築していくことも重要な要素と考えています。
CDの流通はケースによって様々ではありますが、一般的には原盤印税12~16%、アーティスト印税1%、著作権使用料6%、流通45%、レーベル(製造費等これらを引いた残り分・レーベルがリスクを追う形)となっています。また、ストリーミングの場合は、一般的に、月額利用料×会員数×約70%が著作権者と原盤権者の取り分です。
上記のように、いずれの音楽流通も、各媒体それぞれで権利者への適切な収益分配スキームが作られています。この権利がしっかり守られることで、音楽産業は発展した歴史をもちます。それゆえに、私達はNFT音楽流通に関しても、ベストな方法論を見つけなければなりません。
よく、NFTにおける言説で、NFT音楽はアーティストがほぼ100%の利益を手にできると謳うケースがありますが、それは正確な表現ではないと考えています。確かにDIYアーティストやベッドルームアーティストとよばれる、自身で楽曲制作の全ての作業を行う人にとってはその通りかもしれません。しかし、世の中に流通している音楽の多くは、既存の音楽産業の仕組みの上に成り立っているのではないでしょうか。
全てのアーティストが自分で全ての楽曲制作過程を受け持ち、且つ100%の権利を持つというのは想定が難しく、限定的なマーケットであると考えています。だからこそ私たちは、ストリーミングやフィジカルのCDで発売している原盤と同じものを、正しくNFT商品として流通させることができるようにすることが、音楽マーケットのスケールアップにつながると考えています。
■クレイオ社のソリューション
NFTのフォーマットはデファクトスタンダードとして、ERC721という形式、ERC1155という形式があります。それぞれNFTマーケットの最大手であるOpenseaでも対応しているフォーマットであり、私たちはこの形式は崩さずに、自由に設計ができる余地の残されているMetadataの記述に注目しました。
Openseaには、「Metadata Standard」というOpenseaで適切に表示されるための記述方式が規定されています。NFTを作成する際には現状この記述方式がデファクトスタンダードとなっていると言ってもよいでしょう。このおかげで、別の場所で生成されたNFTでもOpensea上で適切に表示されるというメリットを享受できます。
これはNFTを生成する側にとっても、マーケットプレイス側にとってもメリットが大きいため、このMetadata Standardが標準化されることが、NFT音楽にとって流通を正規化していくために重要なプロセスであると考えました。
NFTのMetadataには、画像のURLや説明文、属性情報といった要素が記録されており、これがブロックチェーン上に記録されることでそのデータの唯一性が担保される仕組みになっています。
ここで私たちは、先述した課題に対し、NFT音楽を作成する際に3つの要素を追加することで、NFT音楽の正しい流通に対応できる仕組みを用意しました。
3つの要素とは、「音楽ファイルの暗号化・復号化」、「複数ファイルソースの読み込み」、「Metadata上に著作権者を明記」という3点です。
このMetadata形式で作成されたNFTは、Opensea等の一般的なマーケットプレイス上ではジャケット写真のみが表示されます。しかし、このNFTは購入しなければ楽曲を聴くことはできません。楽曲を聴くためには専用のプレイヤーが必要です。プレイヤーに関しては仕様を公開し、様々なアプリメーカーが楽曲プレイヤーを作成できるようなオープンアーキテクチャーを採用します。
また、音楽をパッケージとして販売可能にするために、楽曲ファイルは複数のファイルを持たせられる形式とします。これにより、例えばアルバムや特典付きのNFTといったアーティストの世界観に合わせた楽曲販売が実現します。
さらに、Metadata上には各楽曲の著作権の明記を行い、販売時、ロイヤリティ発生時に著作権(作詞・作曲・出版)の権利が保持される形での流通を実現します。
私たちは、NFTとは?という根源に立ち返り、NFTのメリットをユーザーが十分に享受できる仕組みを作ることを大切な要素と考えました。それは「CtoCの取引においてオープンなマーケットで安全に取引できること」「パブリックチェーン上のスタンダードな規格として存在すること」の2点を保持することです。
このため、NFT Music Metadata Standardに準拠して発行されたNFTは、一般的なマーケットプレイスであればアート等のNFT作品と同様に流通が可能です。さらに、CDプレイヤーが各電気メーカーから発売されたように、様々なアプリメーカーがこのNFT Music Metadata Standardに準拠したプレイヤーを構築し、そのプレイヤーで復号化できる仕組みを採用することで、正規版の確実な視聴環境を提供出来ると考えています。
■ロードマップ
Phase1
デジタル音楽パッケージの有効性の検証 2021/3Q~2022/3Q
ユーザーによるウォレットの管理はいまだに大きな参加へのハードルになっています。そこで私たちは、従来のデジタルコンテンツの販売手法と同じ形で「数量限定」の「音楽パッケージ」の販売を先行して行いました。この結果、音楽レーベル・アーティスト・マネジメント会社などからのヒアリング、ユーザー側の一定の需要と、マーケティング手法についての知見も得られたことから、これをWeb3の文脈で再構築し、さらに洗練されたデジタル音楽パッケージの仕組みを提案していきます。
Phase2
デジタル音楽パッケージのNFT化、ユーティリティの検証 2022/4Q~2023/3Q
デジタル音楽パッケージをNFTとしてユーザーが保有できるようになります。ここでは、所有したNFTがどのようなユーティリティを発揮するのかを注意深く検証していきます。私たちは、正式な権利に基づいた一次販売を中心にサービスを構築し、二次流通については既存のマーケットに委ねる形で、「オープンな流通」を目指しています。
その中で、例えば初期に発売したNFTが少量だったが、後にそのアーティストが有名になり、希少性が増し価格が変動するといったマーケットのデータを注意深く見ていきながら、音楽パッケージがアーティストの創作活動に最大限プラスに働く仕組みを構築していきます。
Phase3
デジタル音楽プレイヤーのサードパーティアプリへの展開 2023/4Q~2024/4Q
パッケージを販売し、そしてそれを聴くための特別なプレイヤーを開発する。プレイヤーは様々なシーンにおいて機動的に構築されます。例えばメタバースの自分の部屋で聴くためのプレイヤーを各メタバースに組み込む、レストランやバーなどで、聴くことのできる著作権処理を行ったプレイヤーを店舗向けに展開する、そして、アーティストが自身のアプリを用意して専用のプレイヤーを提供するといった様々な利用シーンに共通して使える仕組みを提供していきます。
PressからMintへ。音楽産業の新しい時代の幕開け
エジソンの蓄音機から始まり、私たちはその時代のテクノロジーを活用しながら、音楽を届けてきました。NFTは、そんな新しいテクノロジーの一つになる力を持っています。レコードやCDで使われていたPressという言葉は、Web3の時代にMint(NFTを生成すること)に変わっていくでしょう。そんな音楽産業の新しい時代を、アーティストとともに、音楽に関わる全ての人とともに創っていきたいと考えています。
本 社:東京都港区赤坂3丁目7番地13号
代 表 者:代表取締役社長 神名秀紀
設 立:2019年4月22日
事 業 概 要:マーケットプレイスの企画・開発・制作・運営、動画配信サービスの開発・運営。
【The NFT Records 音楽専門のNFTマーケットプレイス】
https://jp.thenftrecords.com/