日本、2025年の山岳遭難者3,623人で過去最多を更新
2025年、日本の山岳地帯で遭難した人の数が3,623人に達し、1961年の統計開始以来、過去最多を記録したことが警察庁の最新データで明らかになった。前年から226人増加し、事故件数も3,122件と過去2番目の多さとなった。
この数字には、国内登山者だけでなく、訪日外国人観光客の遭難も含まれており、外国人遭難者は246人と、こちらも統計開始以来最多となった。 登山ブームの継続、インバウンド観光の回復、そして高齢化が複合的に影響しているとみられる。
遭難者の約半数が60歳以上 深刻化する高齢登山者のリスク
警察庁によると、遭難者の47.6%が60歳以上であり、特に70代の遭難者が749人と最も多かった。
高齢者の遭難は重症化しやすく、死亡・行方不明者332人のうち約3分の2が60歳以上だった。
専門家は、体力の過信や持病の悪化、判断力の低下が事故につながりやすいと指摘する。
また、スマートフォンの地図アプリに頼りすぎ、バッテリー切れや圏外で道迷いに陥るケースも多いという。
「スマホに頼りすぎず、紙地図やコンパスを併用してほしい」
——警察庁担当者(報道より)
外国人遭難者が急増 バックカントリー利用者が8割
外国人遭難者は前年から111人増の246人で、こちらも過去最多。
そのうち80%がバックカントリースキーや登山中の事故で、装備不足や天候判断の甘さが指摘されている。
特に人気の高い長野・北海道・山梨の3地域で遭難が集中しており、
- 長野:358件
- 北海道:199件
- 山梨:192件
と、いずれも全国最多クラスの発生件数となった。
首都圏近郊の山でも遭難多発 高尾山・丹沢・秩父で100件超
意外にも、遭難が多いのはアルプスだけではない。
東京近郊の人気登山地帯でも事故が急増している。
- 秩父山系:171人
- 丹沢山塊:168人
- 高尾山系:106人
これらは日帰り登山者が多く、装備が軽装になりがちなことが事故増加の一因とみられる。
富士山は規制導入で遭難者減少 “入山規制”の効果が鮮明に
一方、富士山では2025年の遭難者が49人と、前年より34人減少した。 山梨県と静岡県が導入した登山規制や事前予約制度が効果を上げているとみられ、「規制は安全確保に有効」という評価が広がっている。
遭難原因のトップは「道迷い」 熊による被害も3倍に増加
遭難原因の約3割が道迷いで、次いで滑落・転倒が続く。
また、2025年は熊による被害が27件と前年の3倍に増え、山菜採りやキノコ採りの高齢者が被害に遭うケースが目立った。
観光庁は、訪日客の山岳遭難増加を受け、
- 多言語の登山情報提供
- 山岳保険加入の促進
- 登山届の義務化検討
- バックカントリー利用者への規制強化
などの対策を検討している。
実際、遭難者のうち登山届を提出していたのは2割未満にとどまり、救助活動の遅れにつながっている。
登山人口は増加傾向にあり、特に外国人観光客の山岳レジャー人気は高まっている。
専門家は、「気候変動による天候急変の増加、インバウンド回復、高齢化の進行を考えると、遭難件数は今後も高止まりする可能性がある」と警鐘を鳴らす。
安全対策の強化は待ったなし
2025年の山岳遭難者3,623人という数字は、日本の山岳観光が抱える課題を鮮明に示した。
登山者自身の準備不足、外国人観光客への情報不足、高齢化、そして気候変動——複数の要因が絡み合う中、国・自治体・観光業界が連携した総合的な安全対策が求められている。
